矢崎粟は動じることなく、「これはあなたには関係ないでしょう。矢崎お嬢様が心配する必要はありません」と言った。
そう言うと、矢崎粟はその場で大きな瓶を見つけ、餃子を詰め込み、その瓶を竹かごに入れ、紐で吊るして井戸の中に下ろした。
「この厚かましさは城壁を築けるほどだね?」小島一馬は皮肉な目つきで矢崎美緒を見つめながら言った。「これはおばあさんが剛士を救ってくれた皆への感謝の餃子だよ。食べ切れるかどうか、どう食べるかは、手伝いもしなかったあなたには関係ないでしょう?」
【笑い死にそう、小島一馬は流石だわ、最高!】
【小島一馬の言う通り、これはおばあさんが矢崎粟たちにあげた餃子で、矢崎美緒には何の関係もないでしょ?】
【乞食みたいに、いつも人に物をねだるのはやめられないの?】
【上の人なんて言い方してるの!あなたこそ乞食よ!】
【焦ってる焦ってる、某ファンが焦ってる!】
【間違ったことは言ってないでしょ。あなたの美緒姫は一度や二度じゃないでしょ、物をねだるの?毎日努力もせず、働くとすぐ具合が悪くなって、タダ飯食べたいだけでしょ?】
ネット上では矢崎美緒に不満を持つネットユーザーと矢崎美緒のファンが激しく言い争い、番組現場の雰囲気も良くなかった。
「食べたいなら自分の実力で稼ぎなさい。いつもタダ飯を狙うのはやめなさい」
矢崎粟は小島一馬のこの言葉が先ほどよりも更に厳しいものだと感じ、心の中で可笑しくも気持ちがすっきりした。
撮影現場に来る前は、誰かに守ってもらえる感覚を味わうのは随分久しぶりだった。
ここに来てからは、穏やかで争いを好まない伊藤卓も、率直で人懐っこい森田輝も、クールに見えて実は親切な毒舌の小島一馬も、何度も彼女のために不公平を正してくれた。
彼女は本当に彼らに感謝していた。彼らのおかげで久しぶりに温かさと思いやりを感じることができた。
矢崎美緒は小島一馬にそう言われ、心の中で非常に悔しかった。
何が欲しがっているって?
小島一馬は彼女が裕福な家庭の令嬢で、幼い頃からあらゆる肉料理を食べてきたことを知っているはずなのに、さっきの言葉は明らかに彼女を侮辱するために言ったのだ!
彼女はただカメラの前でチームメイトの健康を気遣う姿を見せ、観客の矢崎粟への注目をそらしたかっただけなのに。