矢崎粟たちは丸一日半かけて、脚本と小道具を準備した。
脚本は誰もが知っている「哪吒の海暴れ」の物語で、矢崎美緒たちは人形の小道具を作るのに、透明度が高く、ある程度の硬さがある硫酸紙を使用した。
これらの人物や場面の装飾を描く作業は、美術を学んだ伊藤卓が担当し、みんなで伊藤卓が描いた硫酸紙を、はさみとカッターナイフで切り抜き、最後に人形の関節部分に穴を開けて細い針金を通すことで、その針金を使って人形を動かせるようになった。
「今は人形を操る人手と、音楽だけが残っているね」と小島一馬はテーブルの上の小道具を見ながら言った。
矢崎粟はうなずいて、「今は効果音は口技の達人に任せて、私たちは音楽さえ何とかすればいいわ」と言った。
「監督に声をかけて、スピーカーを借りられないかな?」と伊藤卓は皆を見た。
矢崎粟は首を振って、「私たちは人手が足りないから、BGMを流す人を出せないわ」と言った。
森田輝は皆が眉をひそめているのを見て、アイデアを思いついた。「村の人たちに手伝ってもらうのはどう?」
小島一馬と矢崎粟は同時に彼女の方を向き、その熱い視線に彼女は驚いた。
森田輝は言葉を詰まらせながら「な、なに?」と尋ねた。
「森田輝、あなた天才よ!そのアイデア最高!」矢崎粟は喜んで森田輝を抱きしめた。「その時は皆に人形の操り方を教えて、村の民楽バンドにも音楽の手伝いを頼めるわ!」
小島一馬は笑いながら同意した。「森田輝のアイデアはいいね。こうすれば村人たちも身近な人が出演するのを見て、もっと真剣に見てくれるだろう」
この二日間、彼らは村を歩き回ったが、ほとんどの村人は彼らのネットでよく見かける顔を認識できなかった。
村の老人や子供たちがアイドルに興味がなく、テレビの歌や踊りのような流行の歌も好まないことは明らかだった。村人たちの好感を得るには、大衆心理を利用して村人たちにも参加感を持たせるしかなかった。
彼らが忙しく作業をしている間、配信ルームの視聴者数は知らず知らずのうちにまた増え、コメントは徐々に【没入型手作り視聴】一色になっていった。
そう、ネットユーザーたちは矢崎粟たちが一生懸命に番組の小道具を準備しているのを、手作り作業として見ていたのだ。
【この光景は幼稚園児を思い出させるけど、でもこの影絵芝居が楽しみ】