矢崎粟たちは丸一日半かけて、脚本と小道具を準備した。
脚本は誰もが知っている「哪吒の海暴れ」の物語で、矢崎美緒たちは人形の小道具を作るのに、透明度が高く、ある程度の硬さがある硫酸紙を使用した。
これらの人物や場面の装飾を描く作業は、美術を学んだ伊藤卓が担当し、みんなで伊藤卓が描いた硫酸紙を、はさみとカッターナイフで切り抜き、最後に人形の関節部分に穴を開けて細い針金を通すことで、その針金を使って人形を動かせるようになった。
「今は人形を操る人手と、音楽だけが残っているね」と小島一馬はテーブルの上の小道具を見ながら言った。
矢崎粟はうなずいて、「今は効果音は口技の達人に任せて、私たちは音楽さえ何とかすればいいわ」と言った。
「監督に声をかけて、スピーカーを借りられないかな?」と伊藤卓は皆を見た。