075 心血を無駄にする

矢崎美緒の心のこもっていない笑顔を見て、岡田淳は空笑いを二つ三つ漏らして「食べます、食べます」と言った。

実は彼女はニンジンが全然好きではなかったが、矢崎美緒の傍らに立っている矢崎若菜と矢野常という二人の前では、断る勇気が全くなかった。

矢崎若菜と矢野常が協力して矢崎美緒を守り、矢崎粟を排斥する場面を思い出すと、断りの言葉を口にしたら、この二人に徹底的に排斥されるのではないかと恐れた。

矢崎美緒は岡田淳から肯定的な返事を得ると、嬉しそうに手作り餅を作り始めた。

自分をアピールしたかったので、矢崎若菜たち三人が手伝うと申し出た時、彼女は彼らの助けを断り、一人で餅を焼き、肉を炒め、キュウリとニンジンを千切りにした。

岡田淳はオレンジ色のニンジンが徐々に千切りになっていくのを見ながら、気分が段々と憂鬱になっていった。