078 逆転

前回、小島一馬が矢崎美緒をやり込めた後、ネット上の「#小島一馬の毒舌キャラは偽物、言葉で他人を傷つけるのは本性#」というトピックの下に、突然小島グループ広報部からの返信が現れた。

その返信には余計な言葉はなく、小島一馬と矢崎美緒に関する記事だけが掲載されていた。ネットユーザーたちは記事に興味を持ち、次々と返信に添付されたリンクをクリックした。

リンクをクリックすると、目を引くタイトルが画面に飛び込んできた:【矢崎家のお嬢様は何故芸能界の新人に対して悪態をつきながら笑顔で接するのか?】

記事は一年前の三月のもので、その時小島一馬はプロゲーマーから芸能界に転身したばかりだった。

当時、新人だった小島一馬は、彼が小島家の長男であることを業界でほとんど誰も知らなかった。彼が出演した番組も小規模なものばかりで、共演者は彼と同じ新人か、あまり人気のない先輩たちだった。

その中で中規模と言える番組で、小島一馬は同じく芸能界に入ったばかりの矢崎美緒と出会った。

小島一馬とは違い、当時の矢崎美緒はデビュー時から「山崎家のお嬢様」「紫音姫」という肩書きを持っていた。この中規模番組に出演したのも、ネット上での人気が良好で、矢崎美緒が急速に人気を集めるのに適していたからだった。

この番組への出演は、矢崎家が矢崎美緒のためにより高い領域へ発展するための足がかりとして用意したものだった。

番組制作側もそれを理解していて、番組全体の焦点を矢崎美緒に当て、他の出演者のカメラワークや台本は極めて少なかった。

矢崎美緒は形式的な参加のつもりだったが、思いがけず小島一馬に目を留め、一目で忘れられなくなった。

番組のある企画で、出演者が好きな相手に告白するというものがあった。本来、番組側は矢崎美緒に人気のある、優れた作品を持つ先輩を相手として設定していた。

しかし矢崎美緒は台本通りにせず、その場で人気のない小島一馬に告白した。

さらに司会者がカメラを持って二人の写真を撮る時、矢崎美緒は小島一馬の腕に手を回し、小島一馬が明らかに拒否した後も、なお強引に彼の肩に頭を寄せようとした。

小島一馬が彼女に胸の前で強く掴まれた腕を無理やり引き離した後、矢崎美緒は急に表情を曇らせ、矢崎家のお嬢様に好かれるのは光栄なことだ、わきまえないでと言い放った。