110 確固たる選択

「お兄ちゃん」矢崎粟は雰囲気をこのまま固くしたくなかったので、矢崎泰の袖を引っ張って、「私に話があるんでしょう?」

妹の声を聞いて、矢崎泰は自然と視線を外し、矢崎粟に優しく言った。「粟は賢いね。お兄ちゃんは確かに話があるんだ」

矢崎粟は相変わらず穏やかな笑顔を浮かべている小島一馬を一瞥し、矢崎泰の手を引いて横に移動した。「じゃあ、横で話しましょう。みんなの休憩の邪魔にならないように」

「うん」矢崎泰は素直に矢崎粟について行き、先ほどの場所から数メートル離れたところまで来た。

「粟、大手ブロガーが投稿したDNA鑑定の画像は、矢崎弘が削除させたわ」矢崎泰は穏やかな口調で言った。「今、トレンド入りしているのは、あなたと矢野常の恋愛スキャンダルよ」

矢崎泰の言葉に矢崎粟は一瞬固まった。本当に意外だった。矢崎弘が彼女と矢野常のことを利用して矢崎美緒を助けようとするとは思わなかった。

矢崎家と矢野家は代々の付き合いがある。矢崎弘がこんなことをするということは、きっと矢野常を説得したのだろう。ただし、このことからも分かるように、矢野常は彼らが既に別れたことを矢崎弘に話していないようだ。

矢野常は矢崎若菜と長く一緒にいすぎて、矢崎若菜に感染して頭が悪くなったのだろうか?

二ヶ月前のインタビューでは、彼女との交際を否定していたのに、今になって恋愛スキャンダルを暴露して、自分にどんな影響が出るか分かっていないのだろうか?

彼女が呆然としている時、突然頭上から温もりを感じた。

見上げると、矢崎泰が優しく頭を撫でていた。

彼女が見上げるのを見て、矢崎泰はハンサムな顔に笑みを浮かべた。「粟、怖がることはないよ。お兄ちゃんがいるから、お兄ちゃんが代わりにしっかり懲らしめてやるから」

穏やかな笑顔の矢崎泰を見て、矢崎粟は肩をすくめ、何でもないような口調で言った。「いいよ、お兄ちゃん。好きにさせておこう。彼らにエネルギーを使う価値なんてないわ」

彼らがここまで徹底的にやるというなら、矢野常とキッパリ決着をつけようと思った。

矢崎粟と矢崎泰が横で話している間、小島一馬も黙ってはいなかった。林監督を見つけ、現在のネット上の状況について尋ねた。

林監督から矢崎粟と矢野常の恋愛スキャンダルが暴露されたことを聞いて、小島一馬の心に怒りが湧き上がった。