109 よくやった

林監督は矢崎泰の意向に従って、ライブ配信のことをゲストに伝えた後、部屋に戻ってネット上の世論の動向を見守り続けた。

矢野常と矢崎粟の恋愛関係について、矢野常と矢崎粟のファンが激しく言い争っていた。

いつも矢野常のファンと共に慰め合っていた矢崎若菜と矢崎美緒のファンは、二人の親密な行動に関する話題が打撃を受け、今は全く手助けする余裕がなく、ただ傍観しているだけだった。

すぐに矢崎粟のファンは、矢崎粟のマネージャーの指示のもと、矢野常のファンとの争いを止め、矢野常のファンだけが一人芝居を演じることになった。

他のゲストのファンや一般のネットユーザーは、最初この罵り合いに興味を持っていたが、時間が経つにつれて徐々に飽きてきた。

さらに矢崎粟のファンが争いを収めたことで、まだ騒ぎ立てている矢野常のファンに嫌悪感を抱き、それに伴って矢野常本人にも反感を持つようになった。

結局、多くの場合、ファンの行動はアイドルが責任を取ることになるのだ。

矢崎美緒たちの方と比べると、矢崎粟の方はずっと穏やかだった。皆もライブ配信のことに驚いていたが、感情的になることはなかった。

「さっきの矢崎美緒の顔色は本当にひどかったわね。普段の姫様の面影が全然なかったわ」と森田輝が笑いながら言った。

「本をめくるより早く表情が変わったよ」と伊藤卓が大げさなジェスチャーを交えながら言った。

矢崎粟は二人の掛け合いに笑みを浮かべた。彼女は今ネット上がどうなっているのか知らなかったが、決して平穏ではないだろうと確信していた。

番組参加前に匿名で送信するよう設定しておいたメールは、今頃もう送られているはずで、きっとあのブロガーは中の証拠のスクリーンショットで大騒ぎしているだろう。

小島一馬は眉をひそめ、「粟、今朝君のお兄さんに会ったんだ。今日はネット上で君のことで大騒ぎになっているって。それと『よくやった』って伝えてほしいって」

矢崎粟は嬉しそうに笑い声を上げた。お兄さんがこんなに可愛らしい時もあるなんて思わなかった。「ありがとう、小島一馬。残念ながら私たちは携帯を持っていないから、ネット上の盛り上がりを直接見ることができないわ」

森田輝は興味深そうに尋ねた。「粟、どんな盛り上がりなの?教えてよ!」