林紅子は矢野常と矢崎粟が別れたことを知らなかった。彼女は今の矢野常が頭がおかしくなったとしか思えなかった。
そうでなければ、矢野常が矢崎美緒を助けるために、矢崎粟との恋愛関係を公表し、敵に千の傷を負わせ自らも八百の損失を被るような行為でネットユーザーの注目を集めることを、彼女は説明できなかった。
今日は間違いなく芸能界で今年最も波乱に満ちた一日となるだろう。
次々と明らかになる暴露により、矢崎粟という名前は短時間でインターネット上で話題となり、ネット上は彼女に関する出来事で溢れかえっていた。
林監督は、それによって視聴者数が急増する生放送を見ながら、心の中で喜びに満ちていた。もし隣に矢崎泰が座っていなければ、おそらく今頃副監督と一緒に大笑いしていただろう。
テレビ局側の視聴率は過去最高を記録し、上層部は喜んで、矢崎泰が投資した100万元を全て林監督に次のシーズンの予算として任せることを決定した。
林監督は、昨日の予期せぬ生放送により、矢崎粟と矢崎若菜の兄妹関係が暴露されただけでなく、矢崎粟と矢野常の恋愛関係まで明らかになるとは思っていなかった。
ただし、現在矢崎粟と矢崎家の関係に関する話題はもう見当たらない。林監督は考えるまでもなく、これは十中八九、矢崎弘の仕業だと分かっていた。
林監督は平然とした表情の矢崎泰をこっそり見て、心の中で矢崎弘の偏りを罵った。
矢崎美緒への注目をそらすために、実の妹の利益を犠牲にするなんて、明らかに矢崎粟を家族として見ていないじゃないか!
「矢崎社長、今矢崎粟はネットユーザーに酷く非難されていますが、何か対策を講じるべきでしょうか?」林監督は矢崎粟がこのように矢崎弘に利用されるのを見過ごせなかった。
矢崎泰はさっきからずっと関連トピックのコメントを閲覧していた。特に矢野常のファンが目立ち、矢崎粟を徹底的に貶め、多くの悪質な形容詞を使って、彼女に計算高い女、拝金主義者、寄生虫というレッテルを貼っていた。
最初これらを見た時、矢崎泰はとても怒っていたが、矢崎粟のファンが必死に彼女を擁護しているのを見て、心の中の怒りも次第に収まっていった。
少なくとも、妹には心から彼女を気にかけてくれるファンがいる。それが嬉しかった。