125 矢崎美緒の来訪

これは矢崎美緒が初めて矢崎若菜にこのような扱いを受けた時で、彼女は信じられない表情を浮かべ、ベッドに呆然と座って彼の去っていく背中を見つめていた。

矢崎美緒がこのような扱いに耐えられるはずがない。すぐさま矢崎弘に電話をかけ、告げ口をしようとした。

矢崎弘は心中の不快感を抑え、矢崎美緒の話を最後まで辛抱強く聞いた後、以前のように彼女を慰めることはしなかった。

彼は鼻筋を摘んで、疲れた声で尋ねた。「なぜ若菜が君を叱ったんだ？それは君が矢野常に対して不適切な感情を抱いているからじゃないのか？」

矢崎美緒は矢崎弘が自分のために矢崎若菜を叱ってくれると思っていたが、今回は予想に反して、矢崎弘が矢野常との親密な関係を非難するとは思わなかった。

矢崎美緒は必死に弁解した。「違います！私と矢野常さんの関係は潔白です！」

矢崎美緒の切迫した弁解を聞いて、矢崎弘は一瞬沈黙した。「ネット上のあれだけの証拠があれば、君たちに関係がないとは信じがたいな。」

矢崎弘の疑いに直面して、矢崎美緒は焦った。彼女は矢崎弘が矢崎若菜のように自分を嫌うことを恐れていた。もし矢崎弘も自分を嫌うようになれば、芸能界での彼女の発展に影響が出るかもしれない。

「私と彼の間には本当に何もないんです。三兄さんが信じてくれないのは仕方ないです。だって彼はずっと矢崎粟さんに申し訳ないと思っているから、それは理解できます。でも、どうして二兄さんまで私を信じてくれないんですか？」矢崎美緒は泣き声で話を終え、躊躇なく電話を切った。

以前の矢崎家の者の前での演技的な悲しみと比べて、今回の矢崎美緒の悔しさは本物だった。

彼女は幼い頃から矢崎家に引き取られ、家族の寵愛を受けて育ち、一度も辛い思いをしたことがなかった。今、矢崎若菜と矢崎弘の不信感に直面して、初めて矢崎粟の当時の気持ちが分かった気がした。

電話を切ったのは、矢崎弘が自分から電話をかけてきて慰めてくれることを期待してのことだったが、今回はその願いは叶わなかった。

怒りに任せている矢崎弘は彼女を慰めることなど考えもせず、むしろ怒りのあまり、最近買い換えたばかりの携帯電話をまた投げ捨ててしまった。

矢崎美緒は涙を浮かべながら部屋を出て、一階のリビングへ向かい、小林美登里に慰めてもらおうと思った。