126 矢崎美緒との付き合いを禁止

矢崎美緒は矢野家のリビングに座り、足音が聞こえた瞬間、いつもの可哀想な涙目の表情を浮かべ、足音のする方向を見つめていた。

矢崎美緒は矢野常の胸に飛び込む準備をしていたが、最初に目にしたのは威厳に満ちた老人だった。

「常さん、この方は...」矢崎美緒は困惑した表情で矢野常を見た。

「私の祖父です」矢野常は急いで二人を紹介した。「おじい様、こちらが矢崎家の末娘の矢崎美緒です」

矢野おじい様はにこやかに頷き、先に口を開いた。「矢崎さん、今回のご来訪は何かご用件でしょうか?」

「矢野おじいさん、こんにちは」矢崎美緒はすぐに素直に挨拶をした。「今回は常さんに会いに来ました。インターネット上の噂について、一緒に対策を考えたいと思って」

矢野おじい様は頷いた。「あなたたちの件については既に知っています。私が思うに、この件を解決する方法は一つしかありません」

矢崎美緒は元々解決策に悩んでいたので、矢野おじい様に方法があると聞いて、すぐに希望に満ちた目で彼を見つめた。「矢野おじいさん、どんな方法ですか?」

「矢野常と縁を切ることです」老人の口調は穏やかだったが、矢崎美緒を見る目は非常に鋭かった。

「...」矢崎美緒は矢野おじい様の眼差しに怯え、しばらく言葉が出なかった。

これが矢野家を上流社会に押し上げた前社長なのか、この威圧感は矢崎の父よりも恐ろしい!

「おじい様、彼女を怖がらせないでください」矢野常は矢崎美緒が怯えているのを見て、すぐに気まずそうに取り繕った。

矢野常の焦った様子を見て、矢崎美緒は内心得意げだった。

たとえ彼が矢野常の祖父だとしても、矢野常と縁を切らせるには常の同意が必要でしょう?今の常の彼女を心配する様子を見れば、きっと祖父の言うことは聞かないはず。

矢野おじい様は終始矢崎美緒を観察していた。矢崎美緒は上手く隠していたが、人を見る目には長けている彼は、彼女の目に浮かぶ得意げな表情を一目で見抜いていた。

なるほど、この矢崎美緒が矢崎家の上から下まで手玉に取れるわけだ。その腹の内は、ビジネス界のエリートにも引けを取らないほどだ!