136 仏珠

「以前は彼女がなぜこの仏珠にこだわっているのか分からなかったけど、今やっとその理由が分かったよ」矢崎泰は口角を上げた。

「矢野常の継母がこういうことまで分かるなんて、一目見ただけでこの仏珠が並のものじゃないと分かるなんて」矢崎粟は眉をひそめて考え込んだ。「以前、矢野常と付き合っていた時、彼が継母のことを一度も話したことがなかったのに」

矢崎泰は矢崎粟の言葉を聞いて、矢野常の継母の身分に興味を持ち始めた。「矢野常の継母は当時、一人の力で、矢野常の父親の下にある経営不振で倒産寸前だった数社を立て直したんだ。そのことがきっかけで、普通のグループ総裁秘書から、矢野グループ現総裁の妻へと変わったんだよ」

「矢野常の継母か...面白い人物だな」

矢崎粟は前世でも今世でもこの人物に会ったことがなく、彼女がこれほどの実力者だとは知らなかった。一人の力で矢野常の父親の危機を救えるなんて。