「兄さんも私と同じ考えですね。彼を引き抜いてこられると思います。澤兼弘さんが同意してくれれば、彼と澤兼弘さんを事務所の看板として育てていきたいと思います。今の私にできる最高のリソースを提供したいんです」矢崎粟は目を輝かせながら話し、まるで事務所の明るい未来が見えているかのようだった。
矢崎泰は笑いながら彼女の頭を撫でた。「今、映画やドラマ業界の俳優は二人も見つかったけど、芸能界の他の分野は考えないの?」
その言葉を聞いて、矢崎粟は別の資料の山を指さしながら言った。「考えてますよ。あるシンガーに惹かれています。彼は番組で自作のオリジナル曲で優勝を勝ち取り、コンテスト終了後、自然と番組の主催者である紫音エンターテインメントと契約することになりました」
「でも、紫音に入ってから矢崎弘さんとトラブルがあって、ずっと抑え込まれていて、良い仕事をもらえていません。今は音楽の夢を支えるために、空き時間を使ってバーで歌っているんです」