「まあ、役立たずが去るなら去ればいい。そんなことで私のところまで来る必要はないだろう」矢崎弘は非常に無関心な口調で言った。
森村博人は紫音のために多くの貢献をしてきたのだから、たとえ上層部の混乱時に間違った側についてしまったとしても、紫音の現社長として矢崎弘は惜しむ言葉の一つでも言うべきだった。
森村博人が紫音に十数年も尽くしてきたのに、最後に得られたのはこのような評価だけだった。
林部長は心の中で考えずにはいられなかった。自分も将来、森村博人のように矢崎弘に嫌われた後、紫音のために行った貢献も全て帳消しにされてしまうのだろうか?
林部長の心がこの短い時間で様々に揺れ動いている間に、森村博人の方はすでに素早く荷物をまとめ、矢崎粟のもとへ向かっていた。
「森村部長、当面は在宅勤務でお願いします。スタジオの改装が終わってからスタジオに出勤してください」矢崎粟は今、矢崎泰から渡された資料に基づいて、紫音内部で抑圧され冷遇されているタレントたちの引き抜き対象を選んでいた。