140 傲慢

「まあ、役立たずが去るなら去ればいい。そんなことで私のところまで来る必要はないだろう」矢崎弘は非常に無関心な口調で言った。

森村博人は紫音のために多くの貢献をしてきたのだから、たとえ上層部の混乱時に間違った側についてしまったとしても、紫音の現社長として矢崎弘は惜しむ言葉の一つでも言うべきだった。

森村博人が紫音に十数年も尽くしてきたのに、最後に得られたのはこのような評価だけだった。

林部長は心の中で考えずにはいられなかった。自分も将来、森村博人のように矢崎弘に嫌われた後、紫音のために行った貢献も全て帳消しにされてしまうのだろうか?

林部長の心がこの短い時間で様々に揺れ動いている間に、森村博人の方はすでに素早く荷物をまとめ、矢崎粟のもとへ向かっていた。

「森村部長、当面は在宅勤務でお願いします。スタジオの改装が終わってからスタジオに出勤してください」矢崎粟は今、矢崎泰から渡された資料に基づいて、紫音内部で抑圧され冷遇されているタレントたちの引き抜き対象を選んでいた。

電話の向こうで頷きながら、森村博人は慎重に言葉を選んで矢崎粟に言った。「実は、私は紫音の内部の弱みとなる情報を持っているのですが、矢崎社長のお役に立てるかどうか分かりません。」

森村博人が彼女への呼び方を矢崎さんから矢崎社長に変えたのを聞いて、矢崎粟の機嫌は良くなった。「それなら...明日直接紫音に行って矢崎弘に会い、その証拠を彼の目の前に投げつけてはどうですか?」

森村博人は矢崎粟のこの返答に一瞬黙り込んだ。「......社長、冗談でしょうか?」

矢崎粟は確かに冗談半分でそう言ったが、本気でそう考えていた部分もあった。「矢崎家の兄弟の中で、矢崎弘が一番面子を重んじるんです。あなたが私のスタジオに来たことを知れば、あなたの持つ弱みを恐れてあなたに手出しできなくなるでしょう。部下たちにもあなたへの攻撃を止めさせるはずです。そうすれば、あなたも安心して私のために働けますよ。それに、この弱みを使って矢崎弘から何かを引き出すこともできます。例えば、あなたの元チームのメンバーを無事に紫音から出させることとか。」

森村博人は矢崎粟の話を聞いて、彼女の言う通りだと思った。