矢崎粟はテレビ局のやり方を理解していた。結局、番組が人気を集めた後、様々な資本家がお金を投じて人を送り込もうとするのが多すぎて、テレビ局もお金を無視するほど愚かではないのだ。
林監督は今日電話をかけてきて、矢崎粟に恩を売った。テレビ局は彼女に一人のタレントを番組に連れてきて、二日間の臨時ゲストとして参加させることを決めたのだ。
澤兼弘は矢崎粟に事務所の管理を任され、安藤綾と利木一輝のスケジュールは既に埋まっており、田中凛も撮影終了後の有給休暇を楽しんでいたため、矢崎粟は仕事を終えたばかりの山田勝を連れて行くしかなかった。
矢崎粟が山田勝と空港に着いた時、矢崎美緒と矢崎若菜に出くわした。ただし、今は彼らの傍らに矢崎政氏がいた。
「久しぶりだね」矢崎政氏が率先して矢崎粟に挨拶した。
矢崎粟は矢崎美緒や矢崎若菜に対するような無視はせず、言葉こそ返さなかったものの、矢崎政氏に頷いた。
この四番目の兄とは実際にはあまり確執がなかった。おそらく脚本家をしているせいか、矢崎政氏はほとんどの場合理性的で、矢崎若菜や矢崎弘のように彼女が矢崎美緒を標的にしていると誹謗中傷することはなかった。
矢崎美緒は矢崎政氏が笑顔で矢崎粟に挨拶するのを見て、表情が崩れそうになった。「四兄さん、何してるの?搭乗時間よ。早く中に入らないと飛行機に乗り遅れちゃうわ!」
矢崎政氏はようやく頭を戻し、「美緒に言われなければ忘れるところだった。早く入ろう」と言った。
彼らが空港で出会った瞬間から、彼らの一言一句がカメラに収められていた。林監督もモニター越しにこの場面を見ていた。
この場面による視聴率の上昇を見て、林監督は満面の笑みを浮かべた。今回テレビ局が矢崎政氏をレギュラーゲストとして招待することを決めたのは正解だったようだ。
一日一晩の飛行を経て、飛行機は異国の空港に着陸し、散らばっていたゲストたちは一台の大型バスに集められた。
「S国へようこそ。今回のバラエティ番組のテーマは『遊び』です」