177 師伯の来訪

矢崎弘は配下の探偵事務所に連絡を取り、田中凛についての調査を急ぐよう依頼した。

応対したのは会社の副社長で、胸を叩いて請け合った。「問題ありません。矢崎社長、お待ちください。最長でも3日で資料をお届けします。」

「ああ、できれば親子鑑定もしてくれ。君たちにとっては難しくないだろう？」矢崎弘は足を組んで、無表情で言った。

彼は二人の容姿が似ていることが、表面的なものではないと感じていた。

親子鑑定をすれば、すべてが明らかになるだろう。

副社長は彼の言葉を聞いて、すぐさま答えた。「承知いたしました。3日後に調査結果をメールでお送りします。」

一方、衣装合わせの撮影を終えた矢崎粟は、気分転換に海辺の島に出かけ、カメラマンが彼女の明るい写真をたくさん撮影した。

写真が投稿されると、コメント欄は称賛の声で溢れた。

【粟ちゃん、可愛い！】

【大好き！粟ちゃんと結婚できたら、この人生は価値があるわ。】

【彼女は私たちみんなのもの、独り占めは許さない。】

【そうそう、でも粟ちゃんは相変わらず可愛いね。チケット買ったから、粟ちゃんに会いに行くよ。】

下のコメントは、すべてファンによって占められていた。

多くの一般人も粟の美しさに魅了され、次々と問い合わせをしていた。まさに大規模なファン活動の現場だった。

しかし、矢崎粟を嫌う人も現れた：【露出が多すぎるわ。若い娘に廉恥心がないなんて、本当に風紀を乱すわね。】

しかし、すぐにその発言はファンたちに攻撃され、投稿者は削除して去っていった。

これらのことに矢崎粟はあまり注意を払わなかった。

島から帰ってきて自宅の玄関に着くと、二人の人物が笑顔を浮かべて待っているのに気付いた。

一人は道家の黒い法衣を着て、白髪まじりだが元気そうで、慈愛に満ちた笑顔を浮かべており、年齢は50歳前後だった。

もう一人は若者で、白い長衣を着ており、容姿は中の上といったところだった。

この二人について矢崎粟は記憶があった。

一人は彼女の師匠の師兄で、師伯と呼ぶべき人物で、もう一人は彼の大弟子のはずだった。

「師伯、お久しぶりです。」矢崎粟は挨拶をして、ドアを開け、二人を中に招き入れた。

師伯と呼ばれた人物は慈愛深く頷き、「今日来たのは、主にあなたの師匠についての用件があってね。」と言った。