具体的にどの文字なのか、磨耗のため、一部が見えにくくなっていた。
「心配しないで、指輪の問題とは限らないから」渡部悠人は妻の慌てふためく様子に気づき、なだめるように言った。
この指輪は妻からの贈り物で、もし何か問題があれば、彼女が真っ先に責められることになる。
小島心はそれを当然知っていた。
しかし、なぜか彼女には不吉な予感がして、心の中の声がこの指輪に問題があると告げていた。
矢崎粟は符紙を取り出し、持参した筆で書き込み、それを机の上に置いた。
「よく見ていて」彼女の声が落ちると、指輪を符紙の上に置いた。
瞬時に、符紙全体が燃え上がり、金色の炎が空中で燃え続け、同時に空気中には吐き気を催すような臭いが漂った。
それは血なまぐさい臭いを帯びていた。
まるで腐敗した死体のような臭いが、病室の上空に広がり、頭に直接突き刺さるようだった。