239 感動

「お兄さん、法器を持ってきたの」矢崎美緒は首にかけていたネックレスを矢崎若菜に渡しながら言った。「このネックレスは不運を抑えることができるの」

ネックレスを外したばかりで、まだ温かみが残っていた。

矢崎若菜は感動して尋ねた。「美緒、自分の法器をくれるの?あなたは何をつけるの?」

やはり妹は良い子だ。あの兄弟たちは頼りにならない。

「私は必要ないの。お兄さんが無事でいられれば、それでいいの」矢崎美緒は言い終わると、優しく微笑んだ。

この言葉に矢崎若菜はさらに感動した。

元々、不運な出来事のせいで矢崎美緒を責めていたが、今となっては、やはり美緒が一番彼のことを心配してくれているようだ。

別れた後、矢崎美緒は部屋に戻り、ポケットから玉の指輪を取り出した。

バラエティ番組のことを考えなければ、矢崎美緒はネックレスを矢崎若菜に渡すことなどしなかっただろう。

矢崎若菜に法器を渡し、不運を抑えることで、番組で彼女を守ってくれる人が現れるはずだ。

元々、矢崎美緒は背後の人物から矢崎若菜の不運を抑えるための法器、この指輪を要求していた。

しかしその人物は、この指輪はネックレスよりも効果が高いと言った。

そこで、矢崎美緒は指輪を自分のものとし、ネックレスを矢崎若菜に渡したのだ。

こうすれば、良い妹としての思いやりを示しながら、より良い法器を自分のものにできる。

その時、部屋にいた矢崎若菜は決意を固めた。これからは美緒を大切にし、誰にも彼女をいじめさせないようにしよう。

ここ数日、矢崎粟は事務所の仕事で忙しかった。

彼女は事務所のスタッフたちと何度も会議を開き、今後数ヶ月の事務所の発展方向について強調した。

事務所の利木一輝もここ数ヶ月で多くの新曲を作っていた。

今、録音が終わり、リリースの準備をしている。

新曲がリリースされると、矢崎粟が真っ先にシェアし、彼女がシェアするとすぐに小島一馬もシェアした。

続いて、矢崎粟と仲の良いアーティストたちも次々とシェアした。

一日のうちに、利木一輝の曲は音楽チャートで1位になった。

曲の人気は急上昇し、多くの人々が曲に感動した。

この勢いに乗って、矢崎粟は利木一輝に音楽バラエティ番組の出演を取り付けた。番組での彼の活躍は新たなファンを獲得することにもつながった。