「じゃあ、私が矢崎若菜の代わりに厄運を受けたから、彼は三日間は普通に過ごせて、四日目からまた不運になるってことか?」矢崎弘は推測した。
矢崎粟は頷いて、「はい、その後彼はまた不運になります」と答えた。
そう言われて、矢崎弘は安心した。
「当然不運になるべきだ。天は公平なんだな。とことん不運を味わわせてやる」矢崎弘は気楽に言った。
矢崎若菜が矢崎美緒に運気を与えると約束したのだから、矢崎若菜が責任を取るべきだ。
他人のせいにはできない。
本来なら粟ともっと話して、二人の仲を深めたかったのに、矢崎粟は助手に彼を連れて行かせた。
昔話をする気配は全くなかった。
車に乗ってから、矢崎弘は嬉しそうに写真を撮って矢野常に送り、ついでに矢崎粟が自分にどれだけ優しいかを自慢した。
最後に矢野常に、矢崎粟は法器を売りたくないと伝えた。
矢野常は【なぜ粟は私に法器を売ってくれないの?】と尋ねた。
矢崎弘は軽蔑して反問した。【自分でわかってるだろう?人は自覚を持つべきだ。粟が君のことを好きじゃないのに近づこうとするなんて、殴られても当然だろう?】
理由は誰でもわかっている。矢野常が知らないふりをしても無駄だ。
【君の言葉は酷すぎる。これまでの長年の友情も考えていない】と矢野常は返信した。
矢崎弘の言葉は、あまりにも残酷だった。
まるで矢野常の傷口を開いて、その上に塩を振りかけるようだった。
矢崎弘は笑って、【友達だと思ってなかったら、こんなに話さないよ。暇じゃないんだから】と返した。
他人なら、矢崎弘は面倒くさくて言わない。
矢野常だからこそ多く話したのだが、もちろん、矢野常がどれだけ聞き入れるかは矢野常次第だ。
矢野常は長い間黙っていたが、やがてメッセージを送ってきた。【飲みに行こう。気分が悪いんだ】
矢崎弘は自分の骨折の写真と、頭に巻いた血の付いた包帯の写真を全部送った。
彼は怒って返信した。【飲みどころじゃない!全部矢崎若菜のせいだ。あいつがいなければ、こんな不運にならなかった。今は病院にいるんだぞ!】
矢崎弘は決めた。当分外出しないことにする。
矢崎若菜が再び不運になるのを見届けたら、彼をつかまえて鬱憤を晴らし、思いっきり殴ってやる。
矢崎若菜のことを考えるだけで、矢崎弘は腹が立った。