矢崎粟は答えた。「はい、これからもっと不運になります。これは始まりに過ぎません。彼女は他人から運気を借りていたので、反噬を受けた後はひどい目に遭います。以前の幸運さと同じくらい、これからは不幸になるでしょう」
川上夕子が後悔して不安を感じても、もう変えることはできない。
これは彼女が受けるべき報いなのだ。
渡部悠人はようやく安堵の息をついた。「そうであれば、川上夕子を追い詰めても文句は言えないだろう。彼女を懲らしめる時が来たようだ」
川上夕子は彼を死にかけさせた。この復讐ではまだ足りない。
「川上夕子を懲らしめるだけでなく、川上家も圧迫できます。彼らの内紛に乗じて、川上家を混乱に陥れましょう」と矢崎粟は軽く笑いながら言った。
川上夕子は今、骨董品を見分ける能力を失った。必ず川上家の支配権に目を向けるはずだ。
彼女の目標は、川上家の当主になることだ。
この時期に渡部家が介入すれば、川上家と川上夕子の両方を共倒れさせることができ、どちらも良い結果は得られない。
川上家はもともと川上夕子の邪術に頼っていたのだから、今は報いを受けるべきだ。川上家は骨董品の争いから退くべきだ。
渡部悠人は理解した。「確かに川上家は混乱させるべきだ。渡部家の対抗相手として、彼らはまだ格が足りない」
以前は商売上の争いの際、妻の親友という理由で川上夕子への配慮があった。
しかし今はもう違う。渡部悠人は川上家が混乱すればするほど良いと思っていた。
「川上燕はまた川上家に戻るのでしょうか?」と小島心は興味深そうに尋ねた。
小島心は何が起きたのか詳しくは知らなかったが、矢崎粟が川上燕を助けて、逃げ出す機会を与えたのだろうと推測していた。
「魔窟から逃げ出した以上、川上燕は二度と戻らないでしょう」と矢崎粟は確信を持って答えた。
新しい人生を手に入れた以上、川上燕は川上家のごたごたに関わりたくないはずだ。
一方、病室では。
川上夕子が目を覚ますと、部屋には助手だけがベッドの傍らに座っていた。「父は?私に会いに来なかったの?」
「川上社長はまだオークション会場で骨董品の買い付けをしています」と助手は恭しく答えた。
川上夕子はそれを聞くと、冷たい声で言った。「白湯が飲みたいわ。一杯持ってきて」
助手はそれを聞くと、魔法瓶を持って病室を出て行った。