保管場所に着くと、ボディーガードの一人が口を開いた。「昨夜、奇妙なことが起きました。」
続いて、もう一人のボディーガードが話し始めた。
「夜中に誰かがドアをノックする音が聞こえて、私と田中が開けに行きました。残りの三人は部屋に残っていたのですが、戻ってみると三人とも気絶していました。」
「そして、金庫に貼ってある符紙が次々と燃え始めたんです。とても不気味な光景でした。確認してみると、金庫は誰かに触られた形跡がありました。」
ボディーガードたちの話を聞いて、渡部悠人は背筋が寒くなった。
彼は察した。きっと誰かが骨董品を盗もうとしたが、符紙に阻まれたのだと。
ボディーガードまで気絶させられたことを考えると、当時の状況がいかに危険だったかが想像できる。この符紙がなければ、おそらくこれらの骨董品は全て消え去っていただろう。
渡部悠人は矢崎粟を見て、顔を青ざめさせながら言った。「あなたの用意周到さには感謝します。あなたがいてくれて本当に良かった。」
矢崎粟は頷き、燃えてしまった符紙を見つめた。
彼女は察していた。川上家は本物の骨董品を落札できず、昨日一日も多くの収集ができなかったため、誰かが悪だくみを企てたのだと。
どうやら、川上家は今回本当に大打撃を受け、もう渡部家と対抗できる力はないだろう。
矢崎粟は言った。「もう数枚貼っておきましょう。空港で何か仕掛けられる可能性もありますから。」
これからこの荷物を空港に運ぶ際、多くの人が関わることになる。符紙を貼らないと彼女も安心できなかった。
渡部悠人は何度も頷いた。「お願いします!それなら私も安心です。」
矢崎粟が貼り終わった後、渡部家の人々が箱を運び出し、空港へと送った。
飛行機はすぐに目的地に到着し、渡部悠人が飛行機を降りてまず最初にしたことは、金庫を確認し、中の骨董品の数を確かめることだった。
金庫を受け取った後、矢崎粟は再び符紙が自然発火していることに気付いた。
これは、誰かが飛行機輸送中にこの骨董品を持ち去ろうとしたが、符紙が効果を発揮して、その企みを阻止したということを意味していた。
渡部悠人は符紙が再び燃えているのを見て、心から安堵した。
矢崎粟がいなければ、渡部家が骨董品を落札できたとしても、おそらく守り切れなかっただろう。矢崎粟は今回の骨董品オークションの立役者だった。