256 スキャンダルから遠ざかる

小島一馬の言うことは本当だった。

番組に出演するたびに、矢崎美緒の視線は彼に釘付けになり、まるで長年の恋心を抱いているかのようだった。しかし実際には、二人はプライベートで会ったことすらなかった。

感情的な繋がりなど全くなかった。

矢崎美緒の態度は、誤解を招きやすいものだった。

現場は静まり返り、配信を見ている視聴者たちも呆然としていた。小島一馬がこんなことを言うとは誰も予想していなかった。

カメラの前で、小島一馬は矢崎美緒への嫌悪感を隠そうともしなかった。

しかし、大半の視聴者は小島一馬の言い分に納得していた。

矢崎美緒が空港で矢野常を出迎えた時も、記者たちに写真を撮られ、二人の間に噂が立った。

矢崎美緒と矢崎家の兄たちとの関係も、あやふやだった。

矢崎美緒に関わると、数え切れないほどの噂が立つ。もし矢崎美緒に付きまとわれでもしたら、小島一馬の評判も悪くなるだろう。彼が避けようとするのも無理はない。

傍らの矢崎美緒は目を潤ませ、委縮した様子だった。

この小島一馬は彼女をしつこい厄介者扱いしていた。彼には彼女に対して少しの恋愛感情もないというのか?

人前でこんなことを言われ、立場がなくなった。

矢崎若菜も怒り、小島一馬に向かって言った。「女優との距離を保ちたい、噂を立てられたくないというなら、なぜ矢崎粟にべったりなんですか?矢崎粟も女優じゃないんですか?」

矢野常も密かに頷いた。

この小島一馬の目は完全に矢崎粟に釘付けだ。噂を避けたいというなら、全ての女優と距離を置くべきだろう。

「ふん、うちの粟と矢崎美緒が同じだと思うのか?」小島一馬は無関心そうに反問した。

目のある人なら誰でもわかるだろう?

矢崎粟は実力があって謙虚、誰もが好きになる。

矢崎美緒は話題作りが大好きで、偽善的で、いつも兄たちの後ろに隠れ、他人を馬鹿にしている。

二人は雲泥の差だ。

矢崎若菜は冷笑した。「何が違うというんです?二人とも女優じゃないですか。私には違いなんて見えません。」

違いがあるとすれば、それは小島一馬の好みの問題だろう。

矢崎政氏は眉をひそめて矢崎若菜を見た。矢崎若菜がまだこんなに分かっていないとは思わなかった。まるで脳なしのように矢崎美緒の味方をしている。