矢崎粟はテーブルの上のクッキーを悠々と食べながら、ゆっくりと言った。「自分を騙したいなら、他人にはどうしようもないわ。私たちは見物人でいいのよ」
どうせ最後に不運に見舞われるのは、矢崎若菜だけだから。
矢崎若菜は頭が足りないから、長年可愛がってきた妹は絶対に自分を傷つけないと思い込んでいる。
彼は何度も自分に言い聞かせている、矢崎美緒を信じなければならないと。
その執着心は、残念ながら正しいことに使われていない。
もう一つは、矢崎若菜は自分の身に降りかかった不運について、まだ深く理解していないから、妹を疑うくらいなら自分が不運を被る方がましだと思っている。
彼が完全に不運に打ちのめされたとき、自分がどれほど間違っていたか分かるだろう。
矢崎美緒は矢崎粟があまりにも悠然としているのを見て、心中不満げに言った。「あなたもそんな皮肉な言い方はやめてよ。お兄さんが私を贔屓にしているからって、あなたが傍観者になる必要はないでしょう。これは私たちの問題なんだから」