283 気が遠くなりそう

矢崎若菜は呆れて、全く答える気にもなれなかった。

今、彼は矢崎美緒に対して複雑な感情を抱いており、彼女と話したくなかった。

胸の中にわだかまりが残っているような気がした。

「僕はまだバラエティ番組に出演中だよ！仕事を優先しないといけないから、彼女の世話は戻ってからにするよ！」矢崎若菜は鬱々と言った。

この言い訳は、とても説得力に欠けていた。

小島一馬は言った：「今は仕事の時間じゃないよ。配信は既に終わってるし、今は夜市で遊んでる時間だ。美緒のことが気になるなら、いつでも戻って会いに行けるだろう。」

この言葉で矢崎若菜の言い訳は完全に封じられた。

矢崎若菜は焦って頭を掻き、仕方なく言った：「夜市を見て回りたいだけじゃダメなの？なんでそこまで追及するの？」

この小島一馬は、本当に意地が悪かった。

小島一馬は意味深く言った：「へぇ？妹の世話をする機会があるのに、ホテルに戻りたくないってことだよね？君が彼女に一途だと思ってたけど、やっぱり心の中では気になってるんだ。」

以前の矢崎若菜なら、必ず矢崎美緒の世話をして、彼女のために東奔西走していただろう。

矢崎若菜は見透かされて、腹立たしく言った：「黙ってくれない？静かに歩きたいんだけど、うるさいよ。」彼は既に十分不運だった。

今度は小島一馬にからかわれて、本当に耐えられなかった。

「もちろんダメだよ！まだ聞きたいことがたくさんあるんだから！」小島一馬はにやにやしながら言った。

三男は矢崎粟を最も虐げていた人物だった。

小島一馬は粟のために仕返しをして、彼を皮肉って、粟が昔味わった苦しみを味わわせようとしていた。

矢崎若菜は怒って早足で歩き、小島一馬を振り切ろうとした。

小島一馬も追いかけて来て、笑いながら言った：「そんなに急がなくても。僕は他人の運気を吸い取ったりしないよ。むしろ僕と一緒にいれば、運気が良くなるかもしれないよ。」

運気の話を聞いて、矢崎若菜は本当に気が遠くなりそうだった。さっき起こったことを思い出してしまった。

矢崎若菜の足取りは再び遅くなり、黙り込んで、無表情で前に進んでいった。

彼は本当に小島一馬に言い返せず、聞こえないふりをして逃げるしかなかった。

しかし、小島一馬が彼の耳元で言う一言一言が致命的で、彼の心をより苦しめた。