矢崎美緒が認めない限り、この人たちは彼女に何もできない。
どうせ証拠もないし、真相がどうなのかは誰にもわからない。
矢崎若菜は心の中で躊躇したが、矢崎美緒の確信に満ちた様子を見て、彼女が自分を害するはずがないと思い、板挟みになった。
矢崎粟の言う通りなら、運気を借りるには法術が必要なはず。矢崎美緒がやったのでなければ、運気を借りることなんてできるはずがない。
美緒は本当に何も知らないのだろうか?
矢崎若菜は運気を借りたあの朝のことを思い出した。矢崎美緒は最初に次兄から運気を借りようとしたが、断られて、それから自分に頼んできたのだ。
運気を借りる時も、何度も確認してきた。
これらの記憶を振り返ると、信じたくなくても、不審な点が見えてきた。
矢崎若菜は暗い目で言った。「いいよ、お前がやってないって言うなら、そうなんだろう」