矢崎美緒が認めない限り、この人たちは彼女に何もできない。
どうせ証拠もないし、真相がどうなのかは誰にもわからない。
矢崎若菜は心の中で躊躇したが、矢崎美緒の確信に満ちた様子を見て、彼女が自分を害するはずがないと思い、板挟みになった。
矢崎粟の言う通りなら、運気を借りるには法術が必要なはず。矢崎美緒がやったのでなければ、運気を借りることなんてできるはずがない。
美緒は本当に何も知らないのだろうか?
矢崎若菜は運気を借りたあの朝のことを思い出した。矢崎美緒は最初に次兄から運気を借りようとしたが、断られて、それから自分に頼んできたのだ。
運気を借りる時も、何度も確認してきた。
これらの記憶を振り返ると、信じたくなくても、不審な点が見えてきた。
矢崎若菜は暗い目で言った。「いいよ、お前がやってないって言うなら、そうなんだろう」
諦めるしかない!
もし本当に矢崎美緒が意図的に借りたのなら、自分の運が悪かったということだ。
もし矢崎美緒が借りたのでないなら、それはそれでいい。
三男のこの弱腰な態度を見て、矢崎政氏は驚いて尋ねた。「こんな下手な嘘も信じるのか?頭まで借りられたのか?」
「お前に関係ない。放っておいてくれ」矢崎若菜は悔しそうに言った。
たとえ矢崎美緒が本当に意図的だったとしても、自分の運が悪かったと諦めるしかない。言うことは何もない。
結局、運気を人に貸すと承諾したのは自分なのだから。
カメラの前で人を見る目を間違えていたなんて言えるはずがない。
矢崎政氏は怒りで仰け反り、矢崎若菜に殴りかかって目を覚まさせたい衝動に駆られた。「わかった。今後お前が不幸になっても、俺に助けを求めるな」
矢崎若菜が不運に見舞われれば、病院通いは日常茶飯事になるだろう。
矢崎政氏の見舞いと世話は欠かせないはずだ。
しかし矢崎政氏は本当にもうこの件に関わりたくなかった。骨折り損のくたびれ儲けで、矢崎若菜というバカのせいで半死半生の思いをしているようなものだった。
矢崎若菜は矢崎政氏を無視し、藤田大師に向かって言った。「藤田大師、私の今の状況は解決できますか?費用はいくらですか?」
藤田川は頷いた。「解決は可能です。ただし、とても難しい条件を満たす必要があります。金額は一千万円で大丈夫です」