277 不運は続く

事態は突然起こり、皆は矢崎若菜が頭から床に向かって落ちていくのを目にした。

しかし、頭が床に打ち付けられそうになった瞬間、矢崎粟が手から投げた柔らかいクッションが、

ちょうど矢崎若菜の頭の下に敷かれた。

頭がクッションに当たり、「あーっ!」という鈍い音が聞こえた。

それでも、矢崎若菜は顔全体が痛み、衝撃を和らげた膝はさらに激しく痛んだ。

矢崎若菜は立ち上がって膝を確認すると、膝全体が大きく青紫色に腫れていた。

まさに恐ろしい光景だった。

この時、矢崎若菜は少し崩れ落ち、泣きそうな顔で矢崎粟に尋ねた。「どうしてこんなに運が悪いの?運を借りられなかったの?」

彼は確実に運を借りられたと思い込んでいたからこそ、安心していたのだ。

まさか、こんなにも不運が続くとは。

矢崎粟は笑って言った。「もちろん運は借りられていないわ。運を借りるのがそんなに簡単なら、誰でも他人から運を借りられるでしょう。」

普通の人なら、そのくらいわかるはずでしょう?

矢崎若菜があまりにも騙されやすかっただけ。本当に運が借りられると思い込んでいた。

矢崎若菜は死ぬほど怖くなり、慌ててテーブルの方へ這って行き、ネックレスを身につけてから荒い息を吐いた。

本当に怖かったのだ。

もし何か起きたら、もう誰も助けられないかもしれない。

今はまだバラエティ番組の収録中なのに、矢崎若菜は半死半生の状態になって収録を途中で降板したくはなかった。

矢崎政氏も胸を撫で下ろしながら、急いで矢崎粟に尋ねた。「粟、運を借りるにはどんな条件が必要なの?誰かに騙されて不運になるのは避けたいんだ。」

その場にいた全員が矢崎粟を見つめた。

総監督までもが熱心な眼差しで矢崎粟を見つめ、対策を聞きたがっていた。

矢崎粟は言った。「矢崎若菜のような状況は普通の人には滅多に起こりません。大抵は道で赤い封筒を拾って、中に生年月日が書かれていて、そのお金を使ってしまうと、運や寿命を奪われてしまうというケースです。」

彼女は一旦止まり、続けて言った。「だから、道で赤い封筒や白い紙に包まれたお金を拾っても、決して欲を出してはいけません。」

矢崎政氏は頷き、覚えたことを示した。

「そういう話は聞いたことがある。赤い封筒を拾った後、ずっと不運が続いた人がいるって。」矢野常は頷きながら言った。