317 素顔

矢崎若菜は担架の上に横たわり、全身が痛み、骨が折れているようだった。

痛みで気を失いそうになりながら、目を開けて矢崎美緒を見た。

矢崎美緒は非常に不満そうな表情で、理解できないという様子で「お兄ちゃん、どうしてそんな態度をとるの?わざとじゃないって言ったでしょう。信じてくれないの?許してよ、もう怒らないで!」

彼女は苛立った表情で、早く解決したがっていた。

矢崎若菜は苦痛に目を閉じ、医療スタッフに向かって言った。「病院に連れて行ってください。体中が痛いんです。」

医療スタッフはすぐに担架を持ち上げ、アーチェリー場の外へ向かった。

救急車は場外の入り口で待機していた。

この時、矢崎若菜はようやく矢崎美緒の心がいかに薄情であるか、そして次男と四男が徐々に矢崎美緒から距離を置いていった理由を理解した。

次男と四男は、彼よりもずっと賢かった。

彼らは早くから矢崎美緒の本性を見抜いていた。だから離れることを選んだのだ。

矢崎若菜は自分が本当に愚かだったと感じた。一方的に矢崎美緒のために尽くしたのに、最後には彼女に躊躇なく見捨てられた。これが天からの罰なのだろうか?

目が曇って、誰が本当に一番近しい人なのかが分からなかった自分への罰なのだ!

十数年間愛情を注いできた妹は、危険な時には彼を見捨て、盾にすることができる人間だった。

矢崎若菜は自分自身も憎らしかった。なぜ今になって、やっと矢崎美緒の本性が分かったのか?

すべては遅すぎた。

矢崎美緒のために、矢崎粟を苦しめることを多くしてきた。今では弟の矢崎政氏も徐々に彼から離れていった。周りの人々は彼のことを馬鹿だと思っている。

矢崎若菜は担架の上で、思わず想像した。もし先ほど彼と一緒に馬に乗っていたのが矢崎粟だったら、彼女はどうしただろうか?

彼は確信していた。矢崎粟は決して矢崎美緒のように、彼を盾にはしなかっただろう。

むしろ、共に進退を共にし、一緒に解決策を考えただろう。

担架が救急車に運び込まれ、矢崎若菜が安全に車内に収容されると、矢崎政氏も慌てて車に飛び乗った。

「私は家族です。一緒に行かせてください。」矢崎政氏は焦って言った。

医療スタッフは同意した。病院での支払いや、その他家族が必要な手続きがあるからだ。

家族がいれば、物事がより円滑に進むだろう。