三兄の苦しそうな様子を見て、矢崎政氏も矢崎若菜を責める気にはなれなかった。
以前から何度も矢崎若菜に注意して、矢崎美緒に近づかないようにと言っていたのに。
矢崎若菜は全く聞く耳を持たず、矢崎美緒が最も優しい女の子だと信じ込んで、守り続けようとしていた。
矢崎政氏はため息をつき、身をかがめて矢崎若菜の服を整えながら、優しく尋ねた。「三兄、今になって後悔していますか?矢崎美緒の本性が分かりましたよね?」
今回の出来事の後でも、もし矢崎若菜がまだ矢崎美緒を守ろうとするなら、矢崎政氏は二度と二人の間に口を出すまいと決めていた。
矢崎若菜は首を振った。「これまでの努力を後悔はしていない。ただ妹を大切にしたかっただけだ。唯一の心残りは、もっと早く矢崎美緒の本性に気付けなかったことだ。本当に心が凍る思いだ。」