矢崎政氏も怒り心頭で、矢崎若菜にどう言えばいいのか分からなかった。何度も深いため息をつき、ようやく少し落ち着いた。
「どうして矢崎美緒の言葉を信じるんだ?矢崎美緒は何度もお前を傷つけてきたじゃないか!本当に懲りないな。」矢崎政氏は不思議に思っていた。試合の時、矢崎若菜がまた不運になり始めたことを。
やはり矢崎美緒の仕業だった。
同時に、矢崎政氏は警戒心を高めた。今後、矢崎美緒から贈られたものは絶対に受け取らない。これからは矢崎美緒の一言一言に慎重に考え、慎重に答えなければならない。
矢崎若菜は自分が愚かだったと感じたが、仕方がない。もう取り返しがつかない。
矢崎若菜は冷ややかに矢崎美緒を見つめ、問いただした。「この十数年間、私は心から君を大切にしてきた。一度も厳しい言葉を投げかけたことはない。運気を吸い取られても、文句も言わずに受け入れてきた。」
彼は一旦言葉を切り、続けた。「でも、なぜまた私の運気を吸い取ろうとしたの?私がまだ十分に不運じゃないとでも思ったの?」
なぜ矢崎美緒はこんなにも冷酷なのか!
彼の全ての信頼が、今や笑い話になってしまった。
この時、部屋全体が静まり返り、ゲストたちも矢崎若菜の心の中の戸惑いを感じ取ることができた。
皆が矢崎若菜に同情していた。
五十年もの不運、考えただけでも絶望的だ。
矢崎美緒は本当に酷い、長年の兄妹の情を少しも考慮していない。
矢崎美緒は周りの人々の非難と深い嫌悪を含んだ視線に気づき、もう一度説明せざるを得なかった。「三兄さん、この玉仏は吉祥の気を持つ宝物で、矢崎粟の言うような機能は全くありません。彼女は私を陥れようとしているんです。私を信じてください!」
彼女は目を瞬かせ、涙を浮かべながら、感情を整えて再び言った。「試合が近かったから、三兄さんに幸運が訪れるようにと思って、この宝物を渡したんです。悪意はありません。」
言い終わると、一筋の涙が目尻から流れ落ち、彼女が非常に委屈そうに見えた。
この件について、矢崎美緒は決して認めるわけにはいかなかった。
そうでなければ、もう二度と矢崎若菜の信頼を得ることはできず、二人の関係も悪化し、決裂してしまうだろう。