矢崎粟は何気なく言った。「こんな運気を強奪する方法は禁止されているのに、誰が矢崎美緒にそんなことを教えたのか、本当に酷いことをしたわね」
矢崎粟がここまではっきり言ったのに、もし矢崎若菜が矢崎美緒を許すなら、もう救いようがないだろう。
矢崎若菜はそれを聞いて、顔色が一層青ざめた。
彼は胸が刺されるような痛みを感じながら、呆然と矢崎美緒を見つめ、何を言うべきか、何をすべきか分からなかった。
長年の献身は、すべて彼の自発的な選択だった。
最後にこんな結果になって、矢崎若菜の心臓は痛みに締め付けられた。彼は矢崎美緒が冷酷で、自分を家族とも思っていないことは分かっていた。
しかし、こんなにも残酷だとは思わなかった。彼がすでに40年も不運に見舞われているのに、矢崎美緒はさらに10年を追加しようとしていた。
矢崎若菜は黙り込んでいた。
病室全体が静まり返り、矢野常は矢崎若菜に深い同情を覚えた。
矢崎若菜はしばらく呆然としていたが、藤田川に向かって尋ねた。「藤田大師、この法術は禁止されているということは、国の規定に違反しているということですか?」
藤田川は頷いた。「このような状況では、国の関係部署による調査の後でないと判断できません」
彼は玄学師として、軽々しく判断を下すことはできなかった。
もし先に違反だと判断すれば、それは越権行為となり、これもまた規則違反となる。
矢崎粟はちょうど質問した。「一般人がこのような事態に遭遇した場合、国の関係部署に通報できますよね?」
藤田川は目を輝かせ、矢崎粟を見つめながら、口元に笑みを浮かべて答えた。「もちろん、通報することはできます。関係部署が調査に来ることになります」
矢崎粟のこの質問は、まさに核心を突いていた。
今は矢崎若菜という兄が、矢崎美緒を国の部署の調査にかけることができるかどうかにかかっている。
もし彼がまだ忍びないというのなら、これまでの話は全て無駄になる。
矢崎若菜は躊躇することなく怒声を上げた。「では通報します。担当者に来てもらって調査してもらいましょう。矢崎美緒に他人を害させないようにしなければなりません。背後で誰が糸を引いて、こんな人を害する物を矢崎美緒に渡したのか、徹底的に調べてもらいます」
彼はもう矢崎美緒の仕打ちに耐えられなかった。今回は、感情に流されることはない。