353 トリックを暴く

仕方なく、澤田武は矢崎粟を睨みつけながら言った。「ここで待っていろ。すぐに戻る」

彼は向かい側の茶屋へ小走りで向かった。

その時、茶屋の二階にある個室の窓が開いており、矢崎粟が中を覗くと、見覚えのある人物を見つけた。

それは矢野夫人の甥の吉野誉司だった。

なぜ彼がここにいるのだろう？

前世で、矢崎粟が矢野常と別れた後、吉野誉司は何度も彼女を付きまとい、愛人になれと騒ぎ立てていた。

その男は悪事を重ね、最後には警察に逮捕され死刑判決を受けた。

矢崎粟が二人の振込を受け取らなかったのは、二人に指示された人物からお金を受け取らせ、誰が裏で糸を引いているのかを追跡するためだった。

どうやら、屋台を荒らすよう指示した人物は矢野夫人のようだ。

矢崎粟には理解できなかった。矢野夫人はなぜこんなことをするのだろう？

矢野常が彼女の側でお茶を注いでいるのを見て、気に入らなかったのだろうか？

それなら目には目を、というわけだ。

しばらくすると、澤田武が戻ってきて、テーブルに六百元を置き、矢崎粟に向かって言った。「金を用意した。早く占ってみろ。当たらなかったら、お前の屋台を潰すぞ」

矢崎粟は矢野常を見て言った。「お金を受け取って」

もし矢野夫人が本当に彼女が矢野常を使い走りにしていることに腹を立てているのなら、もっと矢野常を使い走りにしてやろう。

矢野常は矢崎粟が自分に話しかけ、仕事を任せてくれたことに喜びの表情を浮かべ、「はい」と答えた。

彼はお金を受け取った後、矢崎粟に尋ねた。「他に何か必要なことはありますか？」

矢崎粟は少し考えて、「フルーツが食べたいわ。買ってきてくれない？」

矢野常はそれを聞いてさらに嬉しくなり、すぐに頷いた。「わかりました！フルーツ盛り合わせを買ってきましょう！そうすれば、好きなフルーツを選んで食べられますから」

矢崎粟がようやく自分と話をしてくれるようになった。これは彼にとってここ数日で最も嬉しい出来事だった。

案の定、ライブ配信を見ていた矢野夫人澤蘭子は激怒し、テーブルの上の茶器セットを床に叩きつけた。

自分の息子が、いつからこんなに媚びるようになったのか？

自分にはフルーツ盛り合わせなど一度も買ってきたことがないのに！

矢崎粟のせいで親子の仲まで険悪になってしまった。全て矢崎粟という厄介者のせいだ。