365 人生が台無しに

息子の矢野常のために、矢野寿は離婚を切り出すことはなかったが、妻への愛情も薄れていた。

澤蘭子は電話が通じないことに腹を立てた。

そして、彼女は矢野常に目を向け、電話をかけた。

矢崎粟の屋台が片付いた後、矢野常たちは夕食に行く約束をした。

料理が運ばれてきて、空腹の一行は食事を始めた。

矢野常が楽しく食事をしているとき、母親の怒鳴り声が聞こえた。「この不孝者!こんなに長年育ててきたのに、何の役にも立たないなんて!いとこが逮捕されたのに、平然としているなんて、いとこを守る気もないの?」

この言葉を聞いて矢野常も怒った。

彼は箸を置き、怒りの声で言った。「あんなに違法なことをしたのに、どうやって助けろっていうの?用事がないなら、電話を切るよ。」

違法なことは、絶対にしてはいけない。それが底線だ。

母親が手伝えと言うのは、悪事に加担することではないか?

澤蘭子は息子の声に怒りが込められているのを感じ取り、息子の助けを失いたくなかったので、優しい声で言った。「坊や、私があまりにも焦っていただけよ。怒らないで。考えてみて、いとこはとても良い青年なのよ。もし本当に刑を言い渡されたら、人生が台無しになってしまう。母親が焦らずにいられるわけないでしょう?」

矢野常は冷たい声で言った。「彼が間違ったことをしたんだから、その代償を払うべきだよ。誘拐された子供たちや女性たちは可哀想じゃないの?」

彼には本当に理解できなかった。母親がなぜそこまでいとこを救おうとするのか。

澤蘭子は一瞬言葉に詰まったが、感情で矢野常を動かせないと分かると、脅しをかけた。「とにかく、いとこを助けないなら、母子の縁を切るわよ。何か方法を考えなさい!」

矢野常は大スターなのだから、呼びかければ、ファンが助けてくれるかもしれない。

矢野常は嘲笑いながら、首を振った。「母さん、縁を切られても、僕には何もできないよ。彼は今や犯罪者で、僕はただの芸能人だ。そんな力はないんだ。」

澤蘭子は諄々と説いた。「母さんもあなたを困らせたくないの。でも本当に他に方法がないのよ。あなたにできないなら、矢崎粟に頼みなさい。彼女が原因なんだから、きっと救い出す方法を知っているはず。」

彼女は一旦言葉を切り、続けた。「もし彼女が救い出してくれたら、あなたたちの交際を認めてあげるわ。」