364 精神科へ行ってみて

小林美登里は不思議そうに携帯電話を見つめ、兄が誤って電話を切ってしまったのかと思い、もう一度かけ直した。「もしもし、お兄ちゃん、さっき私の言ったこと聞こえた?今夜中に釈放してもらうのが一番いいわ」

電話の向こうで、三秒ほどの沈黙があった。

そして、小林美登里は小林悠一が尋ねるのを聞いた。「お前、まだ病院にいるんだろう?」

小林美登里は答えた。「そうよ、どうしたの?」

これが矢野夫人の甥を救うことと何の関係があるの?

小林美登里が不思議に思っているとき、電話の向こうから声が聞こえた。「時間があったら矢崎正宗に精神科に連れて行ってもらったらどうだ」

小林悠一は、頭がおかしくない限り、こんな悪事の数々を重ねた人間を救おうとは思わないはずだと考えた。

しかも、相手は殺人犯なのだ。