364 精神科へ行ってみて

小林美登里は不思議そうに携帯電話を見つめ、兄が誤って電話を切ってしまったのかと思い、もう一度かけ直した。「もしもし、お兄ちゃん、さっき私の言ったこと聞こえた?今夜中に釈放してもらうのが一番いいわ」

電話の向こうで、三秒ほどの沈黙があった。

そして、小林美登里は小林悠一が尋ねるのを聞いた。「お前、まだ病院にいるんだろう?」

小林美登里は答えた。「そうよ、どうしたの?」

これが矢野夫人の甥を救うことと何の関係があるの?

小林美登里が不思議に思っているとき、電話の向こうから声が聞こえた。「時間があったら矢崎正宗に精神科に連れて行ってもらったらどうだ」

小林悠一は、頭がおかしくない限り、こんな悪事の数々を重ねた人間を救おうとは思わないはずだと考えた。

しかも、相手は殺人犯なのだ。

矢野家の株価が暴落した後、小林悠一も生配信の録画を検索してみた。彼は吉野誉司が多くの悪事を働いたことを知り、すぐにでも刑が確定することを願っていた。

どうして吉野誉司を救うことなどできようか?

小林美登里は悔しそうに尋ねた。「お兄ちゃん、助けてくれないのはいいけど、そんな皮肉を言う必要はないでしょう!」

小林悠一は言った。「こいつが死刑判決を受けるのは当然の報いだ。私にその力がないということは置いておいても、力があったとしても助けるつもりはない」

小林美登里は諦めきれずに言った。「お兄ちゃん、あなたは配信の演出に騙されているのよ。吉野誉司がやったとされる悪事は、全部矢崎粟が注目を集めるためにでっち上げたものなの。吉野誉司は冤罪なのよ」

小林悠一は本当に何を言えばいいのか分からなくなった。妹がこんなにも愚かで頑固になってしまうなんて。

彼はため息をつき、「お前が冤罪だと思うなら、自分で救えばいい。私は関わらない」

小林悠一は本当に小林美登里の頭を割って、中に何が詰まっているのか見てみたかった。自分の娘を信じないで、殺人犯の方が冤罪だと信じるなんて。

「お兄ちゃん!お願い、助けて!」小林美登里は眉をひそめ、小声で叫んだ。

小林悠一は心を鬼にして言った。「私は救わない。小林家の誰一人として手を貸すことはない。諦めろ!」

言い終わると、パンと電話を切った。

小林美登里はその場に立ち尽くし、胸が痛んだ。