矢崎正宗はベッドの横に座り、小林美登里が電話でぺちゃくちゃと話しているのを聞いて、彼女の表情を見ただけで何か様子がおかしいと感じていた。
今、小林美登里の言葉を聞き終わった矢崎正宗は、さらに怒って小林美登里を指差しながら、「何を言っているんだ?」と声を上げた。
ベッドの上で、矢崎若菜も複雑な表情で小林美登里を見つめ、目には信じられない思いが浮かんでいた。
彼は母親が何を考えているのか分からなかった。殺人犯の保釈を父親に頼むなんて!
このことが外部に知られたら、矢崎家の株価は必ず大暴落するだろう。
このような火に油を注ぐような行為は、バカでもしないのに、なぜ小林美登里はこんなにも当然のように提案したのだろうか?
矢崎正宗は深く息を吸い、冷静さを取り戻した。
彼は説明を始めた。「粟はそんな人間じゃない。人の一方的な話だけを聞かないで、まず状況をよく理解してから判断してくれ。」
小林美登里は冷ややかに鼻を鳴らした。「理解する必要なんてないわ。矢崎粟はそういう人間よ。目上の人を敬わないだけじゃなく、家の子供たちまでダメにしている。矢崎粟が人を陥れて刑務所に入れるなんて、彼女ならやりかねないことよ。」
彼女の目には、矢崎粟の良いところは一つもなかった。
矢崎正宗は妻を深く見つめ、尋ねた。「矢野夫人の甥が陥れられたと思っているようだが、彼が何をしたか知っているのか?」
小林美登里は無関心そうに答えた。「知る必要なんてないわ。とにかく彼は陥れられたのよ。彼がしたことなんて、大したことじゃないはずよ。」
せいぜい喧嘩くらいだろうと、小林美登里は理解する必要はないと思っていた。
矢崎正宗は言った。「彼は陥れられたわけじゃない。証拠は明白だ。彼のしたことは些細なことどころじゃない。殺人事件に関わっているだけでなく、女性や子供の人身売買にも関与している疑いがある。そのレベルの事件が、まだたくさんあるんだ。」
小林美登里は驚いて目を上げ、驚きに満ちた目で「そんなはずないわ。矢野夫人はそんなふうに言ってなかったわ。甥は冤罪だって。やっぱり警察署長に聞いてみましょう。そうすればもっとよく分かるはずよ。」
彼女はまだ矢野夫人の甥がそのような違法行為をするとは信じられなかった。