362 絶縁

この数年、彼女は矢野家のお金で実家を援助し、さらに実家のために娯楽会社を設立した。

澤蘭子は暫く黙っていたが、反論した。「誉司が自分で間違ったことをして、警察に見つかっただけなのに、どうして私のせいにするの?私は事前にそんなことは知らなかったわ。」

吉野誉司が違法なことをしたから、把柄を掴まれたのだ。彼女が甥に事を起こさせなくても、いつか留置場に入れられていたかもしれない。

澤誠一はそんなことは気にもせず、また罵り始めた。「この生意気な娘め、間違いを犯しておいて口答えするとは!お前が誉司にトラブルを起こさせなければ、彼のこんな事は永遠に明るみに出なかったんだ。」

「早くネット上の噂を全部処理して、それから警察署に行って誉司を助け出せ。さもなければ、お前とは絶縁だ。二度と実家に戻ってくるな。」

言い終わると、澤誠一は電話をバシンと切った。

彼は長女のことをあまり好きではなかった。頭が悪く、口も上手くなく、仕事をするのも怠け者で、唯一の取り柄は容姿が悪くないことだけだった。

以前は長女に優しくしていたのは、彼女がいつも家計を助けてくれていたからだ。それなのに今、彼女は誉司を警察署送りにしてしまった!

澤蘭子は元々実家に依存していたので、父親から絶縁すると言われ、さらに震え上がり、顔中に動揺を浮かべた。

まだ何か言いたかったが、父親が電話を切ってしまったので、甥を助け出す方法を考えるしかなかった。

澤蘭子は直ちに夫に電話をかけたが、ずっと通じなかった。

夫の秘書に電話をかけると、秘書は矢野社長が出張中で、今は飛行機の中にいるため、電波が届かないだろうと言った。

澤蘭子はどうしようもなく、友人たちに電話をかけ始めた。

しかし、彼らは殺人犯を助けてほしいと聞くと、全員断った。

生配信が放送された後、ネット上では吉野誉司への非難が殺到していた。誰がこんな時に助けようとするだろうか?それは故意にトラブルを招くようなものだ。

誰も澤蘭子のような普通の友人のために、自分が長年築き上げてきたキャリアを犠牲にしようとはしなかった。

澤蘭子は何度も電話をかけたが、まったく成果が得られなかった。

彼女は目を輝かせ、突然ある人物を思い出した。

そこで、澤蘭子は小林美登里に電話をかけ、丁寧にお願いすることにした。