357 ヒーローの美女救出

矢野常は眉をひそめ、少し抵抗を感じていた。

彼は母方の親戚が好きではなかった。彼らはいつも彼におべっかを使い、頭を下げるばかりで、家族としての親近感が全くなかった。

澤家はいつも面倒事を起こし、母の澤蘭子が収拾しなければならなかった。

矢野常は吉野誉司を見て尋ねた。「この二人はお前が呼んだんだろう?なぜ彼らを呼んで事を起こさせたんだ?」

この言葉に、吉野誉司の表情が一瞬凍りついた。

矢野常がこのように詰問してきて、少しの余地も与えてくれなかった。

しかし、彼はすぐに態勢を立て直し、笑いながら言った。「そうじゃないよ、いとこ。僕は彼らに迷惑をかけさせるために呼んだんじゃない。ちょっとした騒動を起こして、ヒーローのように助けに入りたかっただけさ。」

吉野誉司はゆっくりと矢崎粟の方を見て、挑発的な目つきで「なぜなら...この美しい方に惚れてしまったからです」と言った。

この二人を呼んだのは確かに彼だった。否定するつもりはなかった。

なぜなら、否定しても視聴者は誰も信じないだろうし、その上、あの二人のバカが既に彼と叔母の関係を暴露してしまっていた。

吉野誉司は嘘をつくことにした。もし矢崎粟を追いかけたくて店を荒らしに来たと言えば、ネット上の人々は彼を嘲笑するだけで、意図的な騒動まで発展することはないだろう。

罪状も以前より軽くなる。

彼と叔母にとって、これは良いことだった。

吉野誉司が言い終わると、矢野常は思わず嘲笑って言った。「随分と大胆だな、よくそんなことを考えられるものだ。」

矢野常は自分が矢崎粟に相応しくないと思い、もう彼女に近づく勇気もなかったのに、吉野誉司がそんな考えを持つなんて、本当に勇気があるものだ。

矢崎粟は腕を組んで笑いながら言った。「あなたのその態度、私の気を引こうとしているようには見えないわね。むしろ、叔母さんを助けるために、その場で思いついた言い訳みたい。」

吉野誉司は一瞬驚いた。自分の嘘がこんなにも早く見破られるとは思わなかった。

やはり、矢崎粟は賢い。

吉野誉司は少し笑って、平然と言った。「そうじゃありません。以前はいとこの彼女だったから、そんな気持ちを持つ勇気もありませんでした。今は別れたので、少し考えてみる勇気が出ました。表現の仕方が適切ではなかったかもしれません。矢崎さん、どうかご理解ください。」