矢崎粟は「矢崎美緒が君たちを寄越したんだろう?」と言った。
利木健史は心の中で感服し、もはや隠し通すことはできなかった。
彼は数日前に矢崎美緒と出会った時のことをすべて話し、矢崎美緒が彼らに二千万の報酬を約束し、彼女の髪の毛と血液と交換する話もした。
利木健史は、矢崎粟が並の人間ではないと確信していた。
彼女は何でも知っていて、玄門術法まで使える。まさに半仙と呼べる存在だった。
矢崎粟は少し考えてから、「彼女がそこまで私を害そうとするなら、あなたたちが私にしようとしていたことを、全部矢崎美緒にぶつけなさい」と言った。
彼女を害そうとする者には、その代償を払わせる。
矢崎粟は指を鳴らし、利木健史一人の行動制限を解除した。
利木健史は何度も頷き、怒りを顔に浮かべながら「矢崎さん、ご安心ください。必ず彼女を生かさず殺さずにしてやります。あの女は最低です。私たち兄弟を危険な目に遭わせやがって!」
今や彼が最も憎んでいる相手は矢崎美緒だった。
彼女は矢崎粟が玄学大師だと知っていながら、彼らを死地に送り込もうとした。これは明らかに彼らを弄んでいたのではないか?
矢崎美緒は本当に残りの1700万を支払うつもりなどなかったに違いない。
本当に憎らしい!
利木健史が歯ぎしりしている様子を見て、矢崎粟は少し笑い、袋から一本の髪の毛を取り出して利木健史に渡した。「この髪の毛を矢崎美緒に渡して、私の髪の毛だと言いなさい」
この髪の毛は田中凛からもらった矢崎美緒の髪の毛だった。
今こそ使い時だった。
「血液については、あなたたち自身で数滴垂らせばいい」と矢崎粟は続けた。
この四人は大悪人だから、不運に見舞われても当然の報いだ。
矢崎美緒が彼女の髪の毛と血液を必要としているのは、おそらく矢野夫人に渡して邪術を使わせるためだろう。
それならば、矢崎粟は矢崎美緒に自業自得を味わわせ、邪術の味を十分に堪能させてやろう。
利木健史はそれを聞いて目を輝かせ、笑いながら「問題ありません。必ずやり遂げます」と言った。
言い終わった後、彼は少し心配になった。矢崎美緒がこの血液で何をするのか。
しかし1700万という巨額を思い出すと、その心配は吹き飛んだ。自分の血液でなければいい、部下に数滴垂らさせればいい。