車の中で、矢崎粟は藤田川と話をしていた。
彼女は矢崎正宗に一瞥もくれず、それが矢崎正宗の心を痛めた。
以前、家にいた時、矢崎粟はとても素直で思いやりがあった。こんなに良い子が、矢崎家によって失われてしまったのだ。
しばらくして、三人は病室に着いた。
入室後、矢崎正宗は車の荷物を全て運び込むよう指示した。
矢崎政氏も病室にいて、矢崎粟が来たのを見て、顔に喜びが溢れた。
矢崎若菜は藤田川が本当に来てくれたことに、心が激しく動揺した。
ついに不運から抜け出せる!
全ての準備が整った後、藤田川は病室のドアを内側から施錠させた。
そして、荷物の山から木材を取り出した。
彼が手を振ると、柔らかい木材は矢崎美緒の姿に彫刻され、眉目がはっきりとし、体つきも整っていた。
矢崎政氏は少し驚き、一歩後ずさりした。
さすが玄学大師、この能力は驚くべきものだ。
藤田川は言った:「矢崎美緒の髪の毛と血を渡してください。」
矢崎政氏はすぐにベッドサイドの引き出しを開け、紙箱を取り出して差し出した。
藤田川は髪の毛を取り出し、人形の体に巻きつけ、朱砂筆で矢崎美緒の血を付け、人形の心臓部分に塗りつけた。
次に、生年月日時を書いた符紙を人形の腹部に貼った。
藤田川の動きは連続的で力強く、矢崎粟は目を離さずに見つめ、一つ一つの動作を細かく観察していた。
彼女は気づいた。法術が始まった時から、藤田川の体は金色の光に包まれていた。
この金色の光は玄光と呼ばれ、一種の防護膜だ。
藤田川は大円満の境地に達しており、玄光を引き出すことができ、どんな法術を行っても、玄光の加護により、成功率が二十パーセント上昇する。
彼は本当に強い。
矢崎粟は見続けた。藤田川は筆を取り出し、人形の体に古典的な模様を描いていた。
筆の跡には、エネルギーが波打っていた。
どうやら、藤田川は法術を行う際に自身の法力を使い、符に法力を加えることで、より強い効果を得ているようだ。
矢崎粟も法術を行う時に法力を使うが、彼女の法力は遥かに弱い。
矢崎粟の心が動き、玄妙な玄術の世界に没入した。
その後、藤田川はもう一つの人形を彫刻した。この人形は矢崎若菜によく似ていた。
彼は矢崎若菜の髪の毛と血を取り、順番に人形に生年月日時を貼り、符を描いた。