438 実家に連絡する

矢崎美緒は心の中で怒りを感じていたが、どうすることもできず、何か他のことをしようと思い、スマートフォンを開いて矢崎粟のチームのバラエティ番組の再放送を再生した。

彼女は矢崎粟を注意深く観察し、弱点を探そうとした。

画面の中で皆が矢崎粟を褒めているのを見て、彼女の心は非常に苦しくなった。

これらの評価は、本来は彼女のものだったはずだ。

もし矢崎粟があの時バラエティ番組を辞退していれば、彼女が番組で最も人気のある人物になっていたはずだ。

映像の中で、田中凛も登場した。古装束を着て、愛らしい笑顔を浮かべていた。

その時、コメント欄は一様に田中凛の可愛さと美しさを褒め称え、妹にしたいという声で溢れていた。

矢崎美緒は嫉妬で狂いそうになった。

こんなにも似た顔をしているのに、なぜ視聴者は妹の方を好き、自分の方を嫌うのだろう?

彼女と妹の田中凛は、幼い頃から仲が良くなかった。

小さい頃、田中凛は体が弱かったため、実の両親は田中凛により多くの配慮をした。おいしいものや楽しいものがあれば、最初に思い浮かべるのは妹だった。

その時から、矢崎美緒は双子の妹を嫌っていた。

ある日の午後、彼女は偶然に両親が妹を他人の家に送ることを相談しているのを聞いた。矢崎美緒はそれを聞いて、間違いなく妹は良い暮らしをすることになるだろうと分かった。

妹を養子に迎えようとしている家庭は、東京の矢崎家だったのだ!

当時、矢崎美緒は心の中で非常に不公平だと感じ、両親が偏っていると思った。

彼女は決心した。必ず家を出て、矢崎家のお嬢様になってやると。

そこで、矢崎美緒は妹が養子に出される前日に、一緒に遊びに行こうと誘い、相手が気付かない隙に、足を伸ばして田中凛を思いっきり躓かせた。

田中凛はその場で転んでしまった。

彼女の頭は石に打ち付けられ、大量の血を流し、頭に大きな傷ができた。

こうして、矢崎家に連れて行かれる人は、矢崎美緒に変わった。

彼女は願い通り矢崎家のお嬢様となった。

矢崎家での数年間、彼女はずっと良い暮らしをしていた。衣食に困ることはなく、カードの小遣いも途切れることはなかった。

ブランド服やバッグは部屋に山積みになっていた。