矢崎政氏は溜息をつきながら、「分かりました。家に残って、お母さんと一緒にいましょう。それでいいですか?」
矢崎若菜も困った表情で、「そうですね。私たちは残って、ちゃんと付き添いましょう」
どうせ配当金には手を付けられないのだから。
なぜ矢崎美緒のために、自分の利益まで諦めなければならないのか?それは矢崎美緒を得させるだけではないか?
もし小林美登里が考えを改めず、自分の配当金を矢崎美緒にあげようとしたら、それこそ本当に心が痛む。
矢崎弘はこの憤りを抑えきれず、皮肉っぽく言った。「そうですね。私たちが残らなければ、誰がお母さんを困らせるんですか?私たち三人は八つ当たりの対象で、あなたの可愛い娘の矢崎美緒こそが実の子なんですよね」
言い終わると、彼は冷たい目で矢崎美緒を見つめ、誰かに彼女を殴らせたいほどだった。
小林美登里は矢崎政氏と矢崎若菜の言葉を聞いて気分が良くなっていたが、矢崎弘の皮肉な言葉を聞いて、また怒り出した。
彼女は怒鳴った。「次男、あなたは本当に配当金が要らないようね。出て行きなさい、遠くへ行きなさい。あなたを見るとイライラする」
矢崎弘はその言葉を聞いて、むしろ嬉しそうな顔をして言った。「ありがとう、お母さん。今すぐ出て行きます。皆さん、ごゆっくり食事を。私は先に失礼します」
言い終わると、彼は立ち上がってドアの方へ走り去った。
瞬く間に、姿が見えなくなった。
矢崎若菜と矢崎政氏はその様子を見て、目を丸くした。
矢崎弘のたった一言で、かえって災い転じて福となり、母親に家から追い出されるという、この素晴らしい出来事が、なぜ自分たちには回ってこないのだろう?
矢崎若菜と矢崎弘は口を揃えて、「お母さん...」
言いかけた言葉が口から出る前に、小林美登里の険しい表情を見て、冷たく言われた。「あなたたちは出て行くことは考えないで。家に残って私と食事をしなさい」
その後、彼女は矢崎美緒を見て、優しく言った。「あなたも私と食事をしましょう。母娘で一緒に食事をするのは久しぶりね」
「はい」矢崎美緒は嬉しそうに頷き、空いている椅子に座った。
傍らのメイドは既に新しい食器を用意し、テーブルの上の料理も新しいものに取り替え、冷めたものは下げていた。
矢崎美緒は箸を持ち、隣の二人の兄に向かって嘲笑的な笑みを浮かべた。