矢崎粟は自ら彼に約束を取り付け、誰かを迎えに行く際に付き添ってもらおうとした。
小島一馬は当然喜んで承諾し、まず車で矢崎粟を迎えに行き、それから彼女と一緒に成田空港へ向かい、今は出口で矢崎粟の友人を待っていた。
矢崎粟は手に旅行ガイドブックを持っていた。これは先ほど空港入口の旅行会社の人からもらったものだ。
矢崎粟はガイドブックを小島一馬の側に差し出し、笑いながら言った。「この島に行ったことある?景色がとてもいいみたいよ。」
彼女は最近忙しすぎて頭がクラクラしており、短い休暇を取りたいと考えていた。
小島一馬は顔を下げ、矢崎粟の長い睫毛と白い頬を見つめた。彼の心臓は更に激しく鼓動し、視線は矢崎粟が持つガイドブックへと移った。
彼は言った。「その島には実は行ったことがあるんだ。一年中景色が美しくて、特に秋の紅葉は絶景だよ。大学生の時に友達と三ヶ月ほど滞在して、面白いことがたくさんあって……」