矢崎粟は運転席に座り、車を運転していた。
先ほど青木月子が家で急用があり、矢崎粟は自分で運転せざるを得なかった。
矢野朱里は助手席に座り、にこにこしながら言った。「さっき、高校の同級生がたくさんいいねをくれて、遊びにも誘ってくれたわ。みんな私のことを覚えていてくれたのね!」
高校時代、彼女はかなりの有名人だった。
矢崎粟は笑って言った。「そりゃそうよ。矢野さんは超有名な学校一の美人だったもの。誰が矢野美人のことを忘れられるわけないじゃない?」
矢野朱里はへへっと笑って、「あなたが矢野常と付き合わなかったら、学校一の美人はあなただったわよ。私はあなたのおかげで注目されただけ」と言った。
矢野朱里の謙虚な言葉を聞いて、矢崎粟は思わず笑ってしまった。
しばらくして、青木月子から電話がかかってきて、母親が病気で倒れ、看病が必要だと言った。
この数ヶ月は仕事に戻れないとのことだった。
矢崎粟は同意した。
どうせ新しいアシスタントを探すつもりだったし、青木月子は男性なので、頼みにくいことも多かった。
女性のアシスタントがいれば、矢崎粟と矢野朱里にとって都合がいい。
助手席に座っていた矢野朱里は、二人の会話を聞いて目を輝かせた。「粟、誰か紹介してもいい?」
ちょうど適任の人がいた。
矢崎粟は頷いて、「じゃあ、その人の基本的な情報を教えて」と言った。
矢野朱里は話し始めた。「その子は数年前にレストランで知り合った渡辺露っていう子なの。私が財布をなくした時に、渡辺露が監視カメラを調べて見つけてくれたの。その時彼女はただのウェイトレスだったのよ」
矢崎粟は頷いた。その女性はとても親切そうだ。
矢野朱里は続けた。「渡辺露は高校の時から、アルバイトをしながら勉強して、有名大学に入学したの。卒業後は外資系企業に就職して、給料もよかったんだけど、残念なことに数ヶ月前に父親が工事現場で足を骨折して、渡辺露は休暇を取って看病に行ったの」
「でも、その会社は彼女の休暇が長すぎるという理由で解雇してしまったの。でも渡辺露の父親の治療費がたくさんかかるから、数ヶ月分の給料を前払いしてくれる仕事を探しているの。でもそんな仕事はなかなか見つからなくて」
矢崎粟は言った。「彼女の家庭の状況は大変そうだけど、それだけで採用するわけにはいかないわ。彼女の長所を教えて」