496 鉄石の心

小林瑞貴がどうしようと、彼は絶対に玉の瓢箪を吉村久真子に渡すつもりはなかった。吉村久真子が痛みを感じているのは自業自得だ。

彼は慈善家ではないのだから。

吉村久真子は彼の反応を見て、心が冷たくなった。

どうやら、彼女は森田廣の心の中で、何の地位も持っていないようだ。

もし矢野朱里がここにいたら、森田廣は法器を渡してくれただろうか?

きっと喜んで渡したはずだ。

そう考えると、吉村久真子の心にも細かい痛みが広がり、目から涙がこぼれ落ちた。

佐藤大師は矢崎正宗に二、三言言い残して、オフィスを去った。

矢崎正宗は小林瑞貴と矢崎美緒の小さな動きに気付き、小林瑞貴の「覚えておけ」という言葉も聞いていた。

矢崎美緒は小林瑞貴を脅して、玉佩を手に入れたのだろう。

その可能性を考えると、矢崎正宗の目の色が更に深くなり、心の中でため息をつき、思わず矢崎粟のことを考えた。