森田廣は冷たい目をして、「子供の頃、呪いをかけられたことがあるんだ。幸い玄学師に解いてもらえたから、そうでなければ死んでいただろう。君も気をつけろよ、矢崎美緒とは近づきすぎないほうがいい。彼女は何かおかしい」と言った。
彼は小林瑞貴を友人だと思っているからこそ、こんなに長々と話したのだ。
小林瑞貴は弱々しく「分かってるよ、気をつけるから」と言った。
森田廣は彼を一瞥して、「とにかく警告はしたからな。それでも分からないなら、もう知らないぞ」と言った。
彼は小林瑞貴がまだあまり真剣に受け止めていないと感じた。
小林瑞貴は反発して「人のことを言う前に、自分を見てよ。まるでクズ男みたいじゃないか」と言った。
森田廣は怒鳴って「お前までクズ男だって?俺にはちゃんと理由があるんだ。矢野朱里が家族に虐げられるのが怖くて一緒になれなかっただけで、本当は好きなんだ」と言った。
「本当に好きなら、どうして彼女を苦しませられるんだ?」と小林瑞貴は軽蔑したように言った。
森田廣は自分の懸念を矢野朱里に話せばいいのに。
矢野朱里のためだと思い込んで、却って彼女を傷つけることばかりしている。
森田廣は激怒して「言っただろう、俺は矢野朱里が好きなんだ」と言った。
彼は怒りのままアクセルを踏み、道路で暴走した。
小林瑞貴は驚いて「わかった、わかった。もう言わないから、まずは安全運転して。バーに着いてから話そう」と言った。
森田廣は本当に矢野朱里のことを気にかけているようだが、それがどうした?
小林瑞貴から見れば、矢野朱里は二度と戻らないと決意したのだから、どんなに一途でも遅すぎる。
しかしこの言葉は、もう言う勇気がなかった。
二人がバーに着くと、矢崎弘はすでにテーブルを取り、隅で一人で酒を飲んでいた。
二人は近づいて、さらに多くの酒を注文した。
今夜は間違いなく眠れない夜になるだろう。
……
矢野常は少し考えてから、再び電源を入れて矢野朱里に電話をかけた。
矢野朱里は電話に出ると、不機嫌な声で「矢野若様、私に何か用でも?」と聞いた。
矢野常は答えた。「さっき母さんから電話があってな。お前の持ってる骨董品が欲しいって。気をつけろよ」