506 新発見

矢崎粟は矢野朱里の隣に立っている年上の少年を指差した。

矢野朱里は近寄って、頭を掻きながら言った。「この男の子は矢野徹って言って、伯父さんと伯母さんが矢野常が生まれる前に養子に迎えた子なの。矢野家とは血のつながりがないの。私、彼に会うのは久しぶりだけど、今は矢野家で働いているみたいね」

矢崎粟はため息をつき、口を開いた。「私の観察によると、この少年は矢野夫人の実子だけど、矢野社長の子供ではないわ」

「え？」矢野朱里は理解が追いつかない様子だった。

頭を巡らせ、眉をひそめながら言った。「つまり、伯母さんが結婚する前に子供を産んで、その子を養子に出したってこと？」

これはあまりにも常識外れじゃない？伯父さんはこのことを知っているのかしら？

最も重要なのは、澤蘭子が子供を矢野家に養子に出すなんて、本当に図々しいわ。

矢崎粟は頷いた。「相貌から見て、そうですね」

そして、矢崎粟は何気なく矢崎美緒の方を見やり、目を止めて、もう一度注意深く矢野徹の写真を拡大した。

彼女は眉をひそめ、複雑な表情を浮かべた。

矢野朱里は驚いて口を押さえ、慎重に言った。「まさか...矢崎美緒と矢野徹は同じ父親なの？」

矢崎粟は頷いた。相貌から見て、確かにそうだった。

つまり、矢崎美緒と矢野徹、それに川上夕子と吉村久真子は同じ父親を持っているということだ。

矢崎粟は言った。「矢野夫人は本当にすごいわね。私生子を側に置いて、さらに矢野家で働かせるなんて。彼女が矢崎美緒を可愛がるのは、きっと矢崎美緒の父親が好きで、その愛情が及んでいるんでしょうね」

矢野朱里の目は虚ろになった。

頭の中は混乱していたが、現実を認めざるを得なかった。

胸の中に怒りが渦巻いていたが、どこにぶつければいいのか分からず、最後に深いため息をついた。

全ては澤蘭子が悪いのだ。

伯父さんは本当に可哀想だわ。こんなに長い間騙されて、その子供を育ててきたなんて。

もし知ったら、きっと心が痛むでしょうね。

考えれば考えるほど胸が痛くなる中、電話が鳴った。見てみると伯父の矢野寿からだった。

なんでこんなタイミングで？まだ伯父さんにどう対応すればいいか考えていないのに！

矢野朱里は助けを求めるように矢崎粟を見た。矢崎粟は頷いて、「まだ黙っていて、彼には言わないで」と言った。