532 玉環のペンダント

彼女は矢崎美緒の考えていることが本当に理解できなかった。

こんな重要な時期に、自分を怪我させるなんて。

矢崎美緒は頷いて、その符紙を受け取り枕の下に置いた。

そして、竜田実子は続けて言った。「小林瑞貴と小林哲にもっと可愛がってもらえるように工夫して、同時に、機会を見つけて密かに矢崎粟の運気を吸い取るのよ。」

そう言うと、彼女は玉環のペンダントを取り出し、矢崎美緒に着けてあげた。

矢崎美緒は頷いて、「はい、分かりました。」と答えた。

竜田実子は続けて言った。「このペンダントには運気を奪う陣法が仕込まれているわ。矢崎粟の三メートル以内に近づいて、心の中で呪文を唱えれば、彼女の運気を吸収できるの。分かった?」

矢崎美緒は「分かりました、竜田おばさん。」と答えた。

その後、彼女は少し不満そうに額の傷に触れて、「竜田おばさん、傷跡を治す軟膏はありませんか?傷跡が残ると、撮影の時に具合が悪いんです。」

竜田実子は言った。「それは後でいいわ。この期間は、兄たちと矢野常に泣きついて、彼らの愛情を取り戻すように努めなさい。そうしてこそ、運気を取り戻すチャンスがあるわ。」

そう言って、彼女は更に何度も注意を与えてから、立ち去った。

翌日。

矢崎美緒が目覚めると、ふくらはぎが死ぬほど痛く、心も辛かった。

竜田おばさんの言葉を思い出し、矢野常に電話をかけた。

矢崎弘たちの彼女を避けようとする態度からすると、おそらく見舞いには来ないだろう。でも矢野常は昨日、彼女がどれほどひどく転んだか知っていて、スタッフに病院へ連れて行かせたとも聞いている。

矢野常なら攻略しやすいかもしれない。

矢崎美緒は新しい番号で矢野常に電話をかけた。

電話はすぐに繋がった。

矢崎美緒は「常さん、体中が痛くて。私を見に来てくれませんか?一人でとても寂しいの。」と言った。

矢野常は矢崎美緒の声を聞くと電話を切り、仕事を続けた。

矢崎美緒は話し終えて少し待ったが、声が聞こえないので不思議に思って携帯を見た。

画面には通話終了と表示されていた。

矢崎美緒はようやく気付いた。矢野常が彼女の電話をこうも簡単に切ったのだと!

しかし、矢崎美緒にはまだ手があった。彼女には矢野常を来させる別の方法があった。

矢崎美緒は矢野夫人に電話をかけた。