531 言い訳

小林哲は恥ずかしさで耳まで真っ赤になり、口を開いて言った。「じゃあ、続けてください。私は行きます。今日のことは本当に申し訳ありませんでした」

小林哲が去った後、森田輝は首を振った。

また一人、矢崎美緒に騙された人間だ。

こういう人たちはいつも自分を賢いと思い込んでいるが、知らず知らずのうちに弄ばれているのだ。

でも、幸い粟は賢かったから、こういう人たちに騙されずに済んだ。

病院。

小林哲は病室の入り口に立ち、怒りに任せてドアを開けた。

小林瑞貴はすでに帰り、クルーズ船のスタッフも全員帰ってしまい、ベッドの上で携帯ゲームをしている矢崎美緒だけが残っていた。

脇のテーブルには軽食が置いてあり、おそらくクルーズ船のスタッフが買ってきたものだろう。

小林哲はベッドの傍に歩み寄り、嘲笑うように言った。「矢崎美緒、お前のせいで俺は散々な目に遭ったのに、お前は何の影響も受けていないじゃないか」