監視カメラを確認されないように、彼女は仕方なく小林哲に罪をかぶせるしかなかった。
小林哲は息を荒げながら怒りの声で言った。「つまり、これは全部俺のせいってことか?」
彼は矢崎美緒の言葉を簡単に信じるべきではなかった。
矢崎美緒をずっとこんなに可愛がってきたのに、彼女に利用されるなんて、本当に笑えない。
矢崎美緒は首を振って、「違うの、従兄さんが私の言葉を誤解しただけで、私も反省します。気にしないでください」と言った。
彼女は一瞬間を置いて、続けて言った。「矢崎粟、これは私たちの誤解でした。ごめんなさい」
話している間に、彼女の顔には涙が溢れていた。
額の傷と相まって、とても可哀想に見えた。
しかし、矢崎粟たち三人は彼女が演技をしているのを見慣れていて、彼女が無実だとは少しも思わなかった。
矢崎粟は冷たい声で言った。「誤解が解けたなら、あなたたち二人で謝罪文を手書きして、署名して送ってきてください」
そうしなければ、矢崎美緒の性格からして、後で誰かがこの件で問題を起こすかもしれない。
矢崎粟にはそんな遊びに付き合う忍耐はなかった。
矢崎美緒は唇を噛みながら、心の中で不満を感じていた。
謝罪文なんて簡単に書けるものじゃない。それに、自分は何も間違ったことをしていない。全て小林哲が衝動的に行動した結果だ。
でも、もしこれを拒否すれば、矢崎粟が監視カメラを確認するかもしれない。そうなってネットに流出でもしたら、世間の評判がまた下がってしまう。
矢崎美緒は横に座っている小林瑞貴に視線を向け、目に懇願の色を浮かべ、小林瑞貴が助けてくれることを期待した。
小林瑞貴は全てを目撃していて、心の中で冷笑した。
彼はバカじゃない。絶対に矢崎美緒を助けに行くつもりはなかった。
矢崎弘から矢崎美緒のしたことを聞いた時は大げさだと思っていたが、今実際に体験してみると、矢崎弘の言葉は少しも間違っていなかった。
先ほど病室で、矢崎美緒が矢崎粟の仕業だと暗示したから、小林哲は飛び出して矢崎粟に詰め寄ったのだ。
それなのに今は全ての責任を小林哲に押し付けている。
小林瑞貴は心が凍るような思いがして、鳥肌が立ちそうになった。矢崎美緒の本性は本当に恐ろしい。
矢崎美緒の懇願に対して、小林瑞貴はスマートフォンを見下ろすことを選んだ。
矢崎美緒は「……」