540 犯人は小林美登里だった

今、脳の中に虫がいると聞いて、小林瑞貴は心の中で慌てていた。「虫!私は虫が大嫌いなのに、どうして私の頭の中に虫がいるの?あの女のせいかもしれない?」

でも、なぜその人は彼を害そうとしたのだろう?

小泉西も焦っていたが、口を開かなかった。矢崎粟の診察の邪魔をしたくなかったからだ。

矢崎粟はしばらく考えてから、また言った。「もう一度思い出してみて。その人はどんな様子だったの?」

小林瑞貴は何とか落ち着きを取り戻して、「その人はお腹が大きくて、妊婦みたいでした。布の帽子を被って、マスクをしていて、目だけが見えていました。声も変で、わざと裏声を使っているみたいでした」

わざと声を隠していた……この点に、矢崎粟は眉をひそめた。

これは、その人が小林瑞貴の知り合いで、正体を隠すために姿を隠していた可能性があるということだ。

お腹が大きい……矢崎粟は突然ある人のことを思い出した。

もしかして小林美登里?

矢崎粟は言った。「何日だったか覚えていますか?バーのスタッフにその日の監視カメラの映像を出してもらって、分析してみましょう」

バーの入り口には通常監視カメラがある。

もし本当に小林美登里なら、監視カメラを見ればわかるはずだ。

小林瑞貴は頷いた。「その日の日付は覚えています。友達の誕生日で、そのバーも友達が経営しているので、監視カメラの映像を見せてもらえると思います」

小林瑞貴はすぐに友達に連絡を取り、十分後にはその日の映像を受け取った。

小林悠一は今日病室で仕事をしていたので、矢崎粟は彼のパソコンで監視カメラの映像を開き、その日の様子を確認した。

案の定、その夜お腹の大きな女性がバーの入り口をうろうろしていた。柱の陰に隠れながら、時々バーの中を覗き込んでいて、誰かを待っているようだった。

小林瑞貴がバーを出てきた時、女性は柱の陰から飛び出してきて、まっすぐ小林瑞貴に向かって突っ込んでいった。

明らかに故意だった。

ぶつかった後、彼女は顔も上げずに謝罪し、目の前の人が誰かなど気にも留めていなかった。あるいは、相手が誰なのかすでに知っていたのかもしれない。

謝罪の後、女性は反対側に走り去った。足取りには慌てた様子が見られた。

矢崎粟はパソコンを小林悠一たちの方に向けて、「この人に見覚えはありますか?」と尋ねた。