565 3人で憂さ晴らしの酒

矢崎弘も苛立っていたが、言っても仕方がないと思い、忘れることにした。

矢崎弘は言った。「右から左へ流して、気にしないで。気にすると自分を苦しめることになるよ。いつかは乗り越えられる。」

この慰めの言葉に、矢崎政氏の目が潤んだ。

彼は急いで車窓の外を見つめ、心の中の悔しさを押し殺し、気持ちを落ち着かせようとした。

矢崎若菜は虚ろな目で、ただ静かに窓の外を見つめていた。

彼も家庭の問題に疲れ果て、出家して僧侶になることさえ考えていた。そうすれば、母親にもう苦しめられることはないだろうか？

矢崎若菜の目に希望の光が宿った。

しかしすぐに、その光は消えてしまった。父親は絶対に許さないだろう。出家さえも贅沢な願いなのだ。

一方。

矢崎粟は帰宅後、法器を作り始めた。

彼女は自ら玉佩を磨き、黄蝋燭の煙で燻し、最後に玉佩に文様を刻んだ。

全部で二日かかり、一連の工程を経て、法器が完成した。

彼女は玉佩を病室に届けさせ、また工房の仕事に戻った。

その後数日間、矢崎政氏たち三人は毎日小林美登里の別荘で食事をし、小林美登里の愚痴を聞いた。三人が遅れたり誰かが来なかったりすると、小林美登里は発狂したように、何度も彼らに電話をかけ続けた。

夕食後、矢崎政氏は二人に先に帰るよう言い、自分はタクシーに乗って去った。

気がつくと、矢崎政氏はバーに座っていた。

一人で飲むのはつまらないので、矢崎政氏は矢野常にメッセージを送り、一緒に飲もうと誘った。

この頃、矢野常は脚本の研究に没頭していてあまり外出していなかったが、メッセージを見るとすぐにタクシーでバーに向かった。

車の中で、矢野常は森田廣にもメッセージを送った。

森田廣は矢野朱里の近況を知りたがっていたので、すぐに承諾し、バーにやって来た。

三人は同じテーブルに座り、憂鬱そうに酒を飲んでいた。

矢崎政氏と森田廣の仲も悪くなく、以前から一緒に飲んだことがあり、お互いをよく知っていた。三人は途切れ途切れに会話を交わしていた。

その時、矢野朱里も矢崎粟の家に戻っていた。

矢崎粟はリビングで仕事をしていた時、矢野朱里が夜食の持ち帰りを手に「夜食買ってきたけど、食べる？」と声をかけた。

「うん、テーブルに置いて！」矢崎粟は顔も上げずに答えた。