567 厚かましい

森田廣は二人を一瞥し、黙っていた。

店員を呼んで会計を済ませると、「ゆっくり飲んでいってくれ。私は先に失礼するよ。じゃあな」と言った。

そう言って、立ち去ろうとした。

しかし思いがけず、矢野常と矢崎政氏も立ち上がり、森田廣の後を追った。

矢野常は頭を掻きながら、にこにこと「ちょっと用事を思い出したんだ。一緒に行こうよ!」と言った。

矢崎政氏も真面目な顔で言った。「そうそう、私も家に帰るところだったんだ。道が一緒だから一緒に行こう。最近東京は治安が悪いから、途中で誘拐されたら困るしね」

そう言って、矢野常に目配せした。

この二人の様子を見て、森田廣にはすべてが分かった。

眉をひそめ、「どうしても私について来たいのか?」と尋ねた。

もし矢崎粟と矢野朱里が怒ったら、きっと後悔することになるだろう。