560 声明を出す

彼らは本当に矢崎粟に株式を持ってほしいと願っていた。

小林悠一と小泉西も期待の眼差しで矢崎粟を見つめた。

田中千佳の顔に、一瞬の嫉妬が浮かんだ。

矢崎粟はしばらく考え込んで、「この株式を私にくれるということは、私に処分権があるということですよね?」

「そうだとも」小林潤は顔を明るくして、すぐに答えた。

矢崎粟は言った。「では、この株式から生まれる収益は、孤児院に寄付することにします」

「それは...」澤田霞は躊躇いの表情を浮かべ、言葉に詰まった。

そんな大金を矢崎粟は簡単に寄付すると言い出した。これは小林家との関係を一切持ちたくないという意思表示だった。

澤田霞は少し心を痛めた。

小林潤は頷いて、「それがお前の考えなら、我々はそれを尊重しよう。今年からその金額をお前の名義で寄付することにする」